ヒラセドユウキ新しいMV、全国ツアーについて

                                  文=松浦 達

1)はじめに

 彼のファースト・フル・アルバムを聴きましたときに、即座にこの作品から膨れ上がるアウラの矛先を感じました。ポストクラシカル、ポストミニマリズムが気化します中で、あえて今、『monochrome』というコンセプチュアルな題目の下で今の情報過多な時代に真摯に音楽の持つイマジネーションを幅を拡げようとする試み。以前、筆者が、COOKIE SCENEという音楽メディアでクリスチャン・ナウヨクスの作品について書きました以下、一部引用致します。

 

 “今、ロック・ミュージシャンの一部が現代音楽に目を見据えている動きもジャズ・ミュージシャンがロック・ミュージックへの目配せをしているのも含めて、"クロスオーバー"という簡単なタームでおさまるものではなく、音楽的な絵図を描き、新しいヴィジョンを突き進んでゆくアーティストにとっては、ジャンルは最初からあってないようなもので、その「ある概念」を具像化してしまうとなると、どうしてもこういった"カテゴリーが後から付いてくる"いささか前衛的ながらも、「美しい音」を作ってしまうということなのだろう。「美しい音楽」というよりも、「美しい音」。”

 
 

CHRISTIAN NAUJOKS『True Life / In Flames』(Dial)―COOKIE SCENEより

 

 「美しい音楽」というよりも、「美しい音」。それは、ヒラセドユウキが過去のEPやライヴで模索しながらも、アルバムとしては、こういう身嗜みではならないという矜持を感じもします。など、平易ながら作品に関してのレビューは弊ブログに。また、彼の今作を巡りましてのインタビューは独占的にこのmusipl.comに載っております。

 

ヒラセドユウキ インタビュー 『僕は自分の作る曲をすべてロックだと思っている』〜『monochrome』から聴こえる鋭利な色彩〜

 

 ここまでリンクを含めまして追って戴きました方なら、ある程度、彼の音像、パーソナリティに多少は近づけたかもしれません。


2)『monochrome Pt Ⅱ』MUSIC VIDEO
      ―待機の外へ出て、歩むこと

 さて このたび、『monochrome』から新しいMVが公開されますとともに、ツアーの詳細が為されます。

 

ヒラセドユウキ『monochrome Pt Ⅱ』MV

 

 事前に、トレイラー、及び、「behind the scenes」のMVの公開という段階を踏まえますと、この「monochrome Pt Ⅱ」は画素から何から粗さゆえの“親近性”が巡ります。どこか、距離感をもっておられた方でも、この映像を通じまして、フラットに彼の音楽に対峙できるのではないでしょうか。そこまで大層な構えは抜きに。

 玄関で靴を結び、外に出て、道を歩いてゆく中で落ち葉、陽光が撥ね、花の淡い風景が揺れ、四季の風合が混ざり合いながら、ストリートの空気とともにグラデーションのように行き交う人の影が重なり、街の何気ない景色、空の移ろいを経て、後半に彼ことヒラセドユウキは毅然とした表情で、一旦、立ち止まり、前を見つめます。

 元来の曲の持っていた叙情性と含めて、このMVから伝わってきますのは何気ない微かな光的な何かへと兆しへ向かっていこうという様と、淡くも無機的な情景に囲い込まれる何かへの待機の姿勢の併存を想いもします。主体意思として俟つことがいずれ終わるときに、始まる、終わりの場からの新たな始まり―メルロ・ポンティに倣うわけではないですが、期待をした待機は、終わりに既定されていますとしたならば、最後の無音になってからのシーン、空の広さにこそ、わたしはこの映像の示唆深さをおぼえます。足元だけは映るものの、基本、画面に映る実質的な主体はひとりしかいません。しかし、孤独、寂寥感はおぼえないのは冗長な説明や過度な演出が排されているからでもあるのかもしれません。「monochrome Pt Ⅱ」という曲が背面をなぞることで十二分に映像の意味を“育て”ているように思えるからです。


3)そして、ツアーへと

 想いましたら、意図的にでしょうが、アルバムの購入特典CD-Rに収められました「少年」という曲はアウトテイクにはもったいないほどの、即妙と郷愁を縫い合わせるような佳曲です。ヒラセド氏のピアノ、徳澤青弦氏のチェロの蠱惑的な絡み合い方も見事といえますが、アルバムの9曲として意味合いが残響してくる中ではバランスの難しさは感応も致しましたが、是非、興味がある方は聴いてほしいとも思います。

 序文が長くなりましたものの、着実な歩みで、ヒラセドユウキの『monochrome』のリリース・ツアーが2015年2月14日(土)の東京から行なわれます。そして、その後、京都、神戸、名古屋、札幌、そして、東京と各地を巡りゆきます。日程は以下のとおりです。その後、一気に視聴も広がっていきますでしょうMVも含めまして、彼、ライヴに関してmusiplは密接にサポートしていきますので、ご期待くだされば幸いで御座います。




ヒラセドユウキ『monochrome』release tour
ヒラセドユウキ(piano)×徳澤青弦(cello)
2015年2月14日(土)東京 三軒茶屋・四軒茶屋 13:00open/13:30start
2015年2月27日(金)京都 元立誠小学校 18:30open/19:00start
2015年2月28日(土)神戸 塩屋・旧グッゲンハイム邸 19:00open/19:30start
2015年3月21日(土)名古屋 parlwr 18:30open/19:00start
2015年4月25日(土)札幌 music hall cafe 18:30open/19:00start
2015年5月6日(水/祝)東京 光が丘美術館 詳細未定(昼公演)

  主催:dandanorchestra
  各公演ご予約:dandanorchestra@gmail.com 迄、メールにてお申込みください。
         dandanohchestraからの返信を持って予約完了となります。

2015.1.28.寄稿