ヒラセドユウキから連想した坂本龍一のポップネス

 僕がヒラセドユウキのことを坂本龍一に例えた時、そのイメージはどういうものだろうか。彼のことを知ったのはほとんどの人と同じだろうが、YMOである。兄が持っていたYMOのLPレコードで聴いた「RYDEEN」は、当時歌謡曲しか知らなかった僕には大きな衝撃だった。

 

YMO『Rydeen』

 

 坂本龍一は、僕にとってはそんなテクノポップグループYMOのメンバーの1人という認識だった。そんな彼のイメージが大きく変わったのは、NHK教育で放送されていた「YOU」という番組に登場し、エンディングテーマを弾き語りしているのを見た時である。

 

坂本龍一『NHK教育"YOU"エンディングテーマ』

 

 その坂本龍一の姿は美しかった。時系列的に整理すると、「YOU」の放送が1982年から。坂本龍一のエンディングテーマは放送当初からだったが、スタジオで弾いたのは糸井重里が司会を辞める時だった(はず)なので1985年のこと。戦場のメリークリスマスの公開が1983年5月。戦メリは映画としてもヒットしたしテーマ曲も当然聴いてはいたのだが、役者としての坂本龍一の方がインパクトあったからなのか、曲の印象が彼をYMOから引きはがすには至っていない。また「YOU」のテーマにしてもずっと流れていたので当然聴いていたはずだが、それだけで彼の印象を変えたということでもなかった。やはりライブの力というのは大きいのか。実際にピアノを前に演奏する坂本龍一に引き込まれていった。ものすごいインパクトだった。それまでの「坂本龍一」=「YMO」という構図は完全に崩れ、「坂本龍一」=「音楽家」という認識が定着した。

 

坂本龍一『戦場のメリークリスマス』

 

 しかし、ピアノを情感豊かに弾く音楽家はたくさんいる。だが、彼をそういうピアニストと明確に区別するのはそのポップネスだしクリエイティビティだろう。新しい音楽を創ることが主で、綺麗に弾くことだけの音楽家とは完全に一線を画す。また、近年では美しいメロディやポップネスだけではなくアンビエントサウンドなど多様な表現を創造、模索し続けている。

 

Sakamoto Fennesz - Giuseppe La Spada visual

 

 もちろん、実績も評価も既にある坂本龍一と若いヒラセドユウキを同じ土俵で比較するというのは必ずしも正しいことではない。似ているから同じものだとカテゴライズすることが如何にがさつで暴力的なことかも十分に理解している。駆け出しのミュージシャンと比較される大御所にも失礼だし、もしかすると今後数十年の活動によって大御所を凌駕する成長をするかもしれないミュージシャンに枠をはめてしまうという意味でヒラセドユウキに対しても失礼だ。だが、まだ知られていないアーチストを世に知らせる情報サイトmusipl.comとしては、あえてそのがさつで暴力的な表現をしても、この若いアーチストのことを一旦評価してみたいと思うのだ。強引に「平成の坂本龍一」と銘打つことで、1人でも多くの人が興味を持ち、その音に触れる可能性が出るのであれば、がさつな行為もけっして無意味ではないと思うから。(もちろん、坂本龍一は今も生きていて、平成の坂本龍一とは坂本龍一本人であることは大前提として。)

 ヒラセドユウキのこの演奏も、様々な表現にチャレンジしようとしているアーチストの片鱗がうかがえる。けっしてポストクラシカルという小さな枠におさまる人ではないのだという予感を持つに十分だ。

 

ヒラセドユウキ『雨』

 



空間と音の関連性

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ヒラセドユウキ『monochrome』release tour
ヒラセドユウキ(piano)×徳澤青弦(cello)
2015年2月14日(土)東京 三軒茶屋・四軒茶屋 13:00open/13:30start(終了)
2015年2月27日(金)京都 元立誠小学校 18:30open/19:00start(終了)
2015年2月28日(土)神戸 塩屋・旧グッゲンハイム邸 19:00open/19:30start(終了)
2015年3月21日(土)名古屋 parlwr 18:30open/19:00start
2015年4月25日(土)札幌 music hall cafe 18:30open/19:00start
2015年5月6日(水/祝)東京 光が丘美術館 詳細未定(昼公演)

  主催:dandanorchestra
  各公演ご予約:dandanorchestra@gmail.com 迄、メールにてお申込みください。
         dandanohchestraからの返信を持って予約完了となります。