おぐまゆき インタビュー
『9弦ギターを使う意味』
    〜変わっているけれども正直で。正直であるが故に嫌われる〜  (取材:文=大島栄二)

 

  おぐまゆきという人は変わった人である。そもそも音楽をやっているというだけで一般社会人の基準からいえばかなり変わっている人種ではあるのだが、そんなミュージシャンの中でもおぐまゆきは変わっている。
 まず、持っている楽器が変わっている。12弦ギターだ。12弦ギターというのは普通のギターより6弦多く、豊かな響きを鳴らしてくれる、どちらかというと爽やかなイメージのある楽器だ。それをメインの楽器として使っているシンガーはなかなかいない。しかもおぐまゆきの12弦ギターには9本しか弦が張られていないし、張られている9弦も通常の弦が張られているのではない。

 


2年かかって9弦ギターという理想に辿り着いた

m:9弦というのはどういうギターなのですか?

おぐま:12弦ギターから弦を3本抜いて、細い弦のところに太いのを張ったりして、12弦ギターよりもキラキラ感を無くして、低音が強い特殊なギターを使っています。

m:それは誰かがやってるとか、参考になったのはあるんですか?

おぐま:参考というのは特にありません。12弦ギターが良いなと思って買ってみて、だけどなにか理想の音と違うので、自分なりに音を追い求めてみたらそうなったということです。

m:最初から12弦を?

おぐま:最初は6弦です。でも3ヶ月で物足りないなって思って。それで普通の12弦を買って、2ヶ月くらいはノーマルの12弦でやっててやっぱり違うと10弦に。10弦で1年以上続けて、倍音を減らしたいなということで9弦にしたんです。

m:イレギュラーな弦の張り方をすると、普通のギターコードの押さえ方では弾けないのではないかと思うんですけど。

おぐま:多分違うと思います。他の人が弾いてもその音にならないし。自分も手癖で曲を作るので、私自身自分の弾いているコードが何かってよくわかってないんです。

m:普通のコード表には無いような押さえ方をしていると。

おぐま:そうですね。ハイ。その押さえ方をしてもその音にはならない。チューニングもドロップDにしているますので。あと、基本的に6弦は解放にしてて、押さえない。

m:6弦を押さえないで常に解放で鳴らしていると、コードによっては不協和音になるってことはないですか?

おぐま:あるんでしょうけれども、私は気にならないです。

m:そうまでして特殊な弦の貼り方をすることで、どういう音の特徴がありますか。自分らしさとか。

おぐま:よく言われるのは、マイナーコードなんだけれど、完璧にマイナーじゃないとか。逆にいうとメジャーなコードも完全にメジャーには聴こえないと。

m:その曖昧さによって、自分の音楽表現が理想に近付いているというような手応えはあるんですか。

おぐま:歌詞とかも一見暗いですけれど、最終的には希望に向かっているというか、完全にどん底というような歌詞ではないので。コードもそういう表現に近づくのを選んでいます。

   
 

おぐまゆき『路地裏の僕』

 


理論も理屈もまったくわからないギターで

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