2016年のmusipl.comでの7月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 toddle
『Branch in the Road』
 toddleを率いる(?)田渕ひさ子は元NUMBER GIRLのギタリストで、だからいつまでも何をやっても「元NUMBER GIRL」の説明がついて回るのはもう仕方が無い。それは氷室京介や布袋寅泰がどんな活動をしたとしても「元BOØWY」といわれることから逃れられないみたいなもので。氷室や布袋のソロ活動が両方とも「元BOØWY」を彷彿とさせるものであることとは対照的に、「元NUMBER GIRL」の… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 Adele
『Hello』
 歌姫というのはいつの世にもいて、日本の歌姫もいれば世界的な歌姫もいる。アデルは現時点で世界の歌姫と呼ばれる人で、まあ他にも何人かいるのだけれども、グラミー6部門受賞やレコードセールス、歌唱力などの点で、やはり現在最高の歌姫ということで間違いないのだろう。評価の決まっていないシンガーならばその歌のみで善し悪しを考える他無いが、ここまでの評価が固まっている人のことは… (レビュアー:松浦 達
 

 
3位 GLIM SPANKY
『velvet theater』
 声が渋い。サウンドも渋い。大陸的な、異国の光景が頭に浮かんで広がるような独特の雰囲気を放っています。ボーカルのある歌モノではあるけれども、歌よりサウンドが重要な、そして声さえもサウンドのひとつであるかのような、これぞロックだなあという、そんなバンドです。爆音で鳴らしながら聴きたいし、その爆音の中でトリップ出来そうですね。いろいろな賞に輝いたりしてるようで、今後の活躍も… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 Paranel
『温度』
 Paranelが「自身のことを歌う最後の作品」というアルバムからのこの曲は「Sad Song」なのだが、じわじわとフレーム越しに受け入れられてゆく時間と温度の消失を感じるという意味では、とても健やかに想う。この曲が収録されているアルバムは、ピアノと声のみで作り上げられている。佐藤伸治、徳永憲、ペリドッツなどを思わせる彼岸までの距離感を見失わない声の肌理がとても悠亡と響き、そして、悲しい想い出は… (レビュアー:松浦 達
 

 
5位 前野健太
『今の時代がいちばんいいよ』
 なんということもない描写で淡々と平和というものを描こうとする。具体から具体的な固定のイメージを結ばせるのとはまた別の、具体からそれぞれの具体をそれぞれに結ばせようとする。前野健太の表現は本当に面白い。昨年末にCDではなくCD付き本という形で主に書店で販売される音源としてリリースされた最新作の、タイトル曲がこの「今の時代がいちばんいいよ」。リリース直後に買って聴いたときにはサラリと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 zabadak
『遠い音楽』
 これはよく聴いた。若い頃、本当によく聴いた。今でもときどき聴いていた。ついほんの1ヶ月前だ、仕事中にBGMで今日はzabadakを聴いているとツイートしたのは。この歌で歌われているバイオスフェアとは一体なんだろうと、正直わかっていなかったし、今も判っていない。でもとても美しいメロディとそのメロディにベストマッチするしたたかでしなやかな歌声が、そんな疑問というか疑問にもならない無知を… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 婦人倶楽部
『グルメ紀行』
 2014年に佐渡ヶ島の主婦にて結成された婦人倶楽部。じわじわとその活動が拡がり、気付いた人たちが小さくも繋がってゆくのが興味深かった。プロデューサーにはムッシュレモン(カメラ=万年筆、佐藤望)、アートワークに写真家の川島小鳥、そして、気鋭の音楽家が多数、参加し、実在の佐渡ヶ島の主婦がクリティカルにポップに映る。ここの捻じれを冒頭の、まだ開放されたままの水飲み場から今一度、考えてみよう… (レビュアー:松浦 達
 

 
8位 Desperation
『LOVE JET』
 今ほど誰でも音楽を発信することが容易な時代はかつて無かった。作ることも、届けることも。CDを作ることも全国に販売することだって個人ベースでできてしまう。だが、続けることは相変わらず難しいことだ。根性と情熱さえあれば続けることは誰にでもできる。だが、その根性と情熱が一番難しいのだろう。リスナーの側はというと、かつては作品を引っさげてステージに上がってきた段階でかなりの根性と… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 Gotch
『Good New Times』
 ファウンティンズ・オブ・ウェインを思わせる詩的なサニーサイド・バブルガム・ポップ。同時に、エルヴィス・コステロ・アンド・ジ・アトラクションズのような影を忍ばせながら、モデスト・マウスの或る時期の息吹を継受し、いわゆる、アジカンのフロントマンこと後藤正文は、都市の中で花束を受け取り、市井の人たちに渡す。シリアスな様相が強まっていた時世でのこのバウンシーな路上文学的風情はうつくしい… (レビュアー:松浦 達
 

 
10位 せりかな
『風になって』
 さわやかである。この人のことをよく知っているわけではないが、見ていて聴いていて爽やかで清々しい。特に大きな事務所に所属している形跡も見えず、1人で(もしくはそれに毛の生えた程度で)活動しているのだろう。地味に、だけどできる範囲のことは着実にやっていて、こういう活動ができている人のことはそれだけで見ていて気持ちがいい。歌が上手いとか演奏がどうだとか、そういうだけなら世の中に… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 大森靖子
『TOKYO BLACK HOLE』
 大森靖子というのは同時代のどのシンガーとも違っていて、じゃあなにがそんなに違っているんだろうと思っていた。活動が突飛で行動が突飛で、そのアクロバティックなアクションばかりが注目を浴び、ファンからもそれを期待され、期待に忠実に応えるが故にまたそういう突飛さを好きになる人たちに囲まれるようになる。一時的な刺激はやがて平常になり、同じ刺激量では物足りなくなっていく。それは薬剤耐性のようなもので… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 toddle『Branch in the Road』:7月終わりに紹介したtoddleのレビューが1位にランクイン。へー、これが元ナンバーガールのギタリストなんだ〜と、バンドマンの転身ってファンが思ってもみなかった才能や魅力が開花するものですね。バンドが解散するというのは悲しいことですけど、こうやって一種バケる(ナンバガのファンが共感してもらえるのかどうかは別ですが)のなら、バンドの解散も悪いことばかりではないかもしれません。このレビューを含め4つほど元○○シリーズのレビューを出してみてたのですが、気づいてもらえましたでしょうか?

2位 Adele『Hello』:先月に続いてアデルがまた上位に。どういうことでしょうか。世界から検索されてアクセスされているのでしょうか。だとしたら、日本語のレビューでどうも済みません。別に謝る必要はないのですけども。

3位 GLIM SPANKY『velvet theater』:すごく前のレビューが掘り起こされててびっくりしたわけですが、調べてみたらGLIM SPANKYの2ndアルバムがリリースされた直後だったわけです。ファンの間で盛上がったり、話題がある状況で検索する人が何人もいたということかもしれません。時系列を見たら、彼らがメジャーデビューする結構前のレビューで、無名の人たちがレビュー後にメジャーデビューする人たちが出てくるのは、なんか嬉しい気分になります。いや、musiplが後押ししたとか貢献したということでは全然ないのでしょうけども。

7位 婦人倶楽部『グルメ紀行』:不思議なバンド、グループでしょうか、ユニットでしょうか。一応田舎の主婦が集まってというふれこみですが、本当にそうだと思ってる人はどのくらいいるのでしょうか。音楽クオリティも仕掛けも含めて、プロの仕業だなという気がします。こういうと、田舎の主婦にクオリティの高い音楽を創ることなんて出来ないぞと言ってるように聞こえるかもしれません。いやいや、そんなことはないですね。誰だって良い音楽を創ることが出来る時代ですものね。失礼しました。みなさんも新しくてカッチョいい音楽をみなさん創っていってください。

次点 大森靖子『TOKYO BLACK HOLE』:個人的にとても好きな曲で、ダークで哀しくなるテイストの曲がこんなに染み入ってくるのは一体なんなんでしょうか。かなり思い入れを込めて900回目のレビューとして出してみたのですけど、ランキング上位には入ったりしませんでした。かろうじて次点。レビュアーの思い込みがそのままアクセスにつながらないというのが面白いところなのかもしれません。

 私の拠点、京都では7月は祇園祭で盛上がっておりました。が、これが終わると夏も終わりと、そういう人もいるのですけど、まだまだ暑いです。蝉もワシワシと鳴きまくっております。無理に外を出歩くことなく、オフィスで仕事をしていようかなあと思います。

(大島栄二)