2016年のmusipl.comでの12月アクセス数上位10レビューはこちら!


 
1位 エレファントカシマシ
『RAINBOW』
 初期のピリピリとしたライヴのときの彼らを知っている人から、宮本氏が頭をかきむしりながらとりとめなく話すさまがTVの音楽番組で見られるようになった頃、実験と模索を繰り返し進んでゆく在り方、そして、2015年の『RAINBOW』は見事に過去と今の、エレファントカシマシを未来に向けて投げかける内容で、特に、表題曲「RAINBOW」の疾走感は堪らなく、これを。「俺たちの明日」や他にも選ぶべき曲も踏まえ… (レビュアー:松浦 達
 

 
2位 bonobos
『Cruisin' Cruisin'』
 bonobosも実に、活動15周年。しっかりとした文脈の上で、この2016年にブレずに在る。マイペースに、当たり前にそこに居たようなバンドのひとつで、また、同時に、メンバーの脱退や変遷を経て、約2年振りの作品では彼らの人肌通う空気感と、アーバン・ソウルの彩りをなぞり、更に世界中に継承されてきた音楽的要素を並列に越えながら、彼らの過去の曲名「Thank You For The Music」というエコーの中に… (レビュアー:松浦 達
 

 
3位 YeYe
『He Doesn't Have Christmas』
 クリスマスって淋しいイメージしか持ったことがない。楽しげなイベントというイメージが一般的なのかもしれないが、どうしてもそう思えない。友だちや家族と集まって、豪華な料理を食べ、ケーキを分け合い、プレゼントを交換する。生まれてからずっとそんなクリスマスばかりを過ごしてきた人ってどのくらいいるんだろうか。「Do they know it's Christmastime at all?」とバンドエイドは歌ったし、それはアフリカで飢餓に… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 黒沢健一
『So What?』
 無邪気に、軽やかにスイングするロックンロールに持ち上げられることは日々、あると思う。そういう意味では、過去に於いて、もしも、L⇔Rからその後の数多くの名義での活躍も知っている人以外にも、現在の彼の拓けた姿やシンプルにバンド・サウンドを追求する中で伸びやかに歌うさまはなおさら、届く気がしてならない。メロディー・メイカーとしてのみならず、博覧強記な音楽的語彙を巧みにステージの向こう側へ… (レビュアー:松浦 達
 

 
5位 ポタリ
『GOODLUCK』
 こういう声、とても好き。音楽にはそのアーチストの背景とか、ポリシーとか、生き様とか、そういういろいろな尾ひれがついてくるし、それは同じレベルにあるアーチスト同士が争っている時にどうすれば一歩先に行けるかということのために重要なことだし、リスナーがそこから興味を持って共感してアーチストのファンになるということはとても多い。だから多くのアーチストやスタッフたちはその尾ひれ付けやキャラクター定着に…(レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 ゲントウキ
『誕生日』
 そのポップ・センスと比して、ゲントウキは当時、真っ当に評価されたとは言い難いものの、ジャケットのイラストは今やそのタッチを見れば誰でも彼と分かる中村佑介氏が手掛けていた。不世出のまま、バンド形式だった彼らは田中潤氏一人になり、ゲントウキの名前も作品もその後、聞かなくなった。そして不意に、今年、約10年振りの新作がリリースされ、特設HPには錚々たる面々がコメントを寄せ、田中氏の今作に込めた…(レビュアー:松浦 達
 

 
7位 フジロッ久(仮)
『逆らえ!』
 無茶苦茶だ。この音符の凝縮度。ただただBPMを上げるというのとはまた違った、決まっている小節の中にこれでもかと音符を詰め込む作業。速度はけっして上がっていないのに音符が詰め込まれていくことで全身の血が沸騰しそうな感じ。これは良いよな。音符というよりもリズム隊の無闇な叩きまくり。ヘビーメタルのドラムソロを5人のドラマーでやってるのかと思うくらいで、ある意味小気味よい。フジロッ久(仮)の曲は… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 ぼくのりりっくのぼうよみ
『after that』
 その年のシーズンズ・グリーティングみたいにクリスマス・ソングがそれに花を添えるという意味では今年は、この雰囲気かもしれない。どんどん拓けてきている、ぼくのりりっくのぼうよみの年明けにリリースされる、タイトル名から如何にもな『Noah’s Ark』からのリード・ソング。しかも、コンセプト・アルバムの最後を締める曲。18歳の青年が急速度でユーフォリアの新たな形を再定義してゆく頼も… (レビュアー:松浦 達
 

 
9位 Meme
『Machloop』
 Memeは三人からなるバンドだが、商用スタジオを用いず、廃校になった小学校等で録音している。そういえば、昨今、廃校、潰れてしまった小さい施設は再利用の機運がある。時代の流れで、もうずっと残ってい続けられる場所の方が難しく、統廃合されて、元に何があったか忘れられて、その統合した場所も寂れて、いずれ別のスマートシティとして再蘇生するのは一部にすぎず、放って置かれたまま、歴史も人も移ろう… (レビュアー:松浦 達
 

 
10位 SANABAGUN
『人間』
 TV放送のアニメ制作者の「ベッドシーンはNGなので、代わりに男女の食事シーンを意図的に入れてる」との話に、メジャーの難しさは規制の枠、それを感じさせない表現かと。深夜フリートークで「こんな雨の日は一日中部屋で彼とヤりまくりたい」と気さくに話す歌姫も、メジャーではカブトムシやテトラポットに置き替えて「こんな夜にお前に乗れないなんて!」的に暗号化する訳で。サナバガンの1stメジャーアルバムの… (レビュアー:北沢東京)
 

 
次点 リコチェットマイガール
『ターミナル』
 曲が始まってやる気のなさそうな人が歌って、やる気のなさそうなギターが、ベースが、ドラムが演奏をする。演奏陣の手元を見るととにかく手数が少なくて動きもスローモーに見え、こんな動きでこの音が鳴るのかと不思議に思うが、どうやらそういうのもこのビデオのための演出のひとつなのだろう。バンドとはおそらく関係のない女性がビデオを通して登場する。この、女性が出てくるという演出は、メンバーが個々に演奏する… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 エレファントカシマシ『RAINBOW』:12月30日のレビューが一気にアクセスを集めて堂々の1位。エレカシには熱心なファンがいるなあと感心しました。文中からリンクのある3年前の彼らのレビューもアクセスを集めました。

2位 bonobos『Cruisin' Cruisin'』:bonobosもファンの皆さんの支持を集めて2位にランクイン。メンバーの皆さんも注目してくれたようで、感謝です〜。

3位 YeYe『He Doesn't Have Christmas』:YeYeのクリスマスソングが3位に。このタイミングで公開されたライブ映像もあったのですが、どちらを紹介しようかと迷った末に、クリスマスソングの方にしました。印象的な歌と曲でしたね。

4位 黒沢健一『So What?』:12月に急逝した黒沢健一のレビューにも多くの人が関心を寄せました。今年は本当に著名人の訃報が相次ぎました。そういう時にはどうしても故人を偲びたくなるものなのでしょう。個人的には生きて活動しているうちに関心を持った方がいいのになとは思うのですが、亡くなったタイミングでそれまでの業績に想いをはせることもまた、意味のあることなのかもなあと思った2016年だったような気もします。

5位 ポタリ『GOODLUCK』:1000レビューを記念して、記憶に残るレビューと銘打ってTwitterで2時間毎に連続してツイートした投稿にメンバーが気付き、ファンの間で盛上がったみたいです。そういうの、良いですね。関心を持ったファンに囲まれているという感じで。一方その盛上がりを受けて最近の曲のレビューも書いたのですが、そっちはさほど盛上がらず。メンバー自身が気付くかどうかって、大事なんだなあとあらためて思いましたです。

6位 ゲントウキ『誕生日』:リリース前からかなり話題だったゲントウキの新曲が6位にランクイン。話題だったし内容からももっと上位にいくかなと思ってたんですが、6位というのがちょっと微妙というか、アクセスランキングって面白いなあという印象です。いいアルバムですから、皆さん是非聴いてくださいね。

7位 フジロッ久(仮)『逆らえ!』:フジロッ久(仮)の縦横無尽ぶりというか、自由な音楽創造がとっても好きなんですよね。この自由さがファンをどんどん振り落としていってしまっているんじゃないかなあという危惧もありつつ、でもついていける猛者だけが純粋に集うというのもひとつの理想でもあるような気がして。いや、理想だけでは食っていけませんけどね。それでも自由に音楽を創っていった先の修羅みたいなものを、是非とも見せてもらえないだろうかと、そんな気分で追いかけてみたいという気もします。

 2016年は本当に怒濤のように過ぎ去って、新しい年を迎えたわけですけど、皆さんはどんな新年を迎えましたでしょうかね。僕は今実家のこたつに入ってみかんを剥きながらこのページを作っています。2017年も淡々とこのmusiplをやり続けていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

(大島栄二)