正山陽子
 
『旅立ちの歌』
 手紙、きみ、ふたり、こころ…大きな言葉行き交い、なにより「きみを思う」-思う君が僕だった、というのは90年代、00年代のアフォリズムで、人称性をなくしていけばいいという磁場はあったが、結局、正山女史はトーンを落とし、記号としての「友達」を詠う。ビバップはジャズのダンス機能性を異化させたと言われる。チャーリー・パーカーが結んだ音像のなかに、“それ”を見出せる人はじゃあ、もっとアシッドに語っていけるような気もするが……
 
  (レビュアー:松浦 達)  

 
『バイバイバイ』
 レトロモダンなサウンドに、ビタースイートな歌声。初めに聴いたときはエゴ・ラッピンの中納良恵や昨今、話題になっている現役ホステスにて歌手のなかの綾などの影もちらついたが、スムースな音楽を届けていたBardsyrupとしてのメンバーを経て、2010年にソロ活動に移ってから、彼女は、スウィング・ジャズ、ソウル、ときにトライバルで性急なリズムの上で、求心性と迫力のあるパフォーマンスをみせていた。常盤司郎が手掛けた、このシックで簡素なこのMVで……
 
  (レビュアー:松浦 達)