小林未季
 
『スクリーン』
 こちらに向かって迫ってくる熱量がない、というよりもこちら側から歌に向かって迫っていこうというベクトルを遮断しようという意志さえ感じられるのだ。歌として表現しているのだから、もう放っといてというものではないはず。本当に放っといて欲しいのであれば歌などで表現すること無く引退した方がいい。しかしそうではなく歌として表現して、しかも距離を置きたい、立ち入らせたくないというのであれば、そういうものが「表現したいもの」だったのだろう……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『Dance』
 歌っていったいなんだろうといつも思う。なんで人は歌うのか。なんで人は音楽を聴くのか。この人の新しいDanceという歌は画面でひたすらに踊る人が映し出される。英語による歌は、人は生まれた時は何も知らないといい、そしてダンスですべてを忘れようという。肉体を動かすとき、それに集中することは人間というより動物的ななにかなのだろうし、それによっていろいろなことを思考の中から追い出す効果があるのだろうか。だとしたら……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『テンポ』
 比較的低音域に特徴のあるボーカルが淡々と歌うこの曲、全体的に重く感じるのはその声質の故なのか、それとも歌う内容の重さ故なのか。いずれにしても軽くその時の雰囲気だけを和ませるような種類の歌ではないように感じて興味深い。歌詞を読むとまた別の意味も読み込めるのだが、ただ画面を眺めながら耳から聴こえてくる歌を感じていると、なんともいえない閉塞感に押されているような気分になってくる。曲のテンポに合ったメトロノームが映されるが……
 
  (レビュアー:大島栄二)