ヒグチアイ
 
『どうかそのまま』
 数年前に感じていたヒグチアイの熱量たっぷりの演奏と歌唱が、このところ鳴りを潜めている、と感じていた。この曲もそうだ。この淡々とした歌唱。力を入れている素振りすらない。いってみれば、誰にでも出来る表現だ。こんなの、他の歌や曲と比較してわざわざ選ぶ理由はどこにあるんだろう。そう思った。最初に聴いた時には。
 しかし、ヒグチアイだ。もしかしたら何かあるのかもしれないと思って何度か聴いた。聴いているうちにゾワゾワした。淡々と。……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『備忘録』
 子どもが辛い習い事に時間を費やす日々が、本当に必要かと考えることがある。厳しい練習だったというクラシックピアノの十何年が、クラシックそのものじゃなくても、ヒグチアイの自己表現の骨になっている様子を見て「やはり、幼年期から何かに打ち込ませる事がいつかこの子に救いになるのではないだろうか」と、信じたい様に解釈して、確信が欲しいけど、でもそれはどう考えてもサバイバル術の半分まで。コース決定、環境設定を強いるなら同時に……
 
  (レビュアー:北沢東京)  

 
『ココロジェリーフィッシュ』
 低音からグイグイと迫ってくるパワフルボーカル。こういう、なんという特徴があるわけでもない正統派ボーカルだけれども低音にドスのある女性シンガーというのは意外に少なく、普通ならその好き嫌いで聴くかどうかをまず判断するのだが、僕はこの人の歌を聴いていて、息継ぎのユニークさに耳が止まった。息継ぎは人間が歌う時に当たり前のように起こる現象で、だからそれを否定するつもりは無いのだけれども、歌にとってのノイズとして感じられて耳を……
 
  (レビュアー:大島栄二)