日食なつこ
 
『white frost』
 日食なつこがまた雪深い中でのMVをリリースした。ほぼ2年前にレビューしたログマロープでは雪降る中素手で鍵盤を叩いていた。岩手出身だから寒いのに強いのか、今回は雪原に横たわって歌っている。そんなに厚手の服ではないから、寒さというより冷たさがすぐに身体を包むはず。素手で鍵盤を叩くのもツライが、この服装で雪原に居ることもかなり辛い。この雪原は背景から高い山の、氷河のような場所で、厚手の装備をしても行くだけで辛い。もうそれだけで参りました……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『レーテンシー』
 男全体に三行半を突きつけたような日食なつこが、このMVではどこかの広場でピアノを弾き語る。どこだろう、良い場所を探したな。そのうちに画面は思いっきり退く。ん? 他の人がいるぞ。野球やってる。ここは草野球のグラウンドの、その外野の端の端だ。これだけカメラが広角になって、野球してる人以外がどこにもいないのがわかる。普通MV撮影する時には演者の周囲にはスタッフが取り囲んでいるものだけれども、この広角の映像の時にはグラウンドの隅に……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『ログマロープ』
 雪の中で鍵盤を弾きまくり歌いまくる日食なつこ。こんなところに楽器持って来るのって物理的にも大変だし、雪をかぶったら壊れるんじゃないかという心理的にも大変だろうなあと普通に思います。でもそれで音楽が拡がっていって聴いてもらえればいいじゃないかと人は言うでしょうけど、キーボードぶっ壊して本当に拡がる保証は無いし、鍵盤ぶっ壊さなくても拡がる可能性もあるわけで…なんて考えている間は音楽が良くなったりはしないのでしょう……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『あのデパート』
 扇情的な鍵盤を叩く日食なつこ。特別に打力があるということでもないのに底知れぬパワーを感じさせるその鍵盤の音、鍵盤力といってもいいのだろうか。その日食なつこの最新曲は彼女の地元で43年続いたデパートの閉店に捧げたバラード。名曲だ。淡々と弾く鍵盤と歌。これまでの彼女の歌とは一線を画すようなテイストを感じる。一貫して内面をえぐるような描写を続けてきた作風とは違い、過去の思い出をひとつひとつ重ねるように描く。単なる風景描写のようでありながら……
 
  (レビュアー:大島栄二)