尾崎豊
 
『僕が僕であるために』
 1980年代に尾崎豊が売れた理由が、実のところ正直言ってよくわからないのだ。確かにヒット曲はキャッチーだった。メッセージ性も強かった。メッセージソングを当時の若者が求めていたのも確かだ。渡辺美里がマイジェネレーションを歌い、佐野元春がSOMEDAYを歌い、ハウンドドッグは観客に拳を突き上げることを求め、聖飢魔Ⅱは観客を鑞人形にした。いや最後のは冗談として、そういう時代にちょっとだけ遅れてやってきた尾崎豊はバイクを盗み教室の窓ガラスを……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『I Love you』
 当時反抗する十代のアイコンとしてガラスを割ったりバイクを盗んだりという歌詞が過剰に喧伝され、10代のカリスマとして持ち上げられた尾崎豊。2枚目のアルバムで卒業を歌い、それは同時に20代になることで10代の何かとは決別して新たな道を模索しようとしていたのだと思う。だが歌うことが見つからずに苦悩する。だがそれは最初のヒットから沸き起こった期待と敷かれてしまった路線にフィットしようとした努力と、現実の自分との乖離に苦しんだ姿だったのでは……
 
  (レビュアー:大島栄二)