うたたね
 
『うつくしいもの』
 瑞々しい田んぼの光景から始まる。田園風景は様々な自然を映し、開放的な和室でギターを奏で、歌を歌う姿を映す。どれもが美しい。雨の大地も、雲間からの陽光も。京都で暮らすようになるまで、山の間に雲が霧がかかり、遠くの山が霞んで立体的な重なりを見せるというのを知らなかった。あれは中国の水墨画の中だけの光景だと思っていた。だが、そういうシーンは日本の至る所にある。都会だけで暮らしていたら知らないことだらけだ。スーパーで野菜や肉を……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『栞』
 うたたね、という言葉は不思議で「あの子、うたた寝しているよ。」と当たり前のように言うのと、ニュアンスを変えて「居眠りばかりして。」と言うのはその響きを全く別のものにしてしまう。また、漢字で“転寝”とすると、どこか泰然とした感じがなくなり、忙しなさをおぼえる。
 世の中に絶対がないのと同じように、つかめそうでつかめない、まどろんだ吐息をさり気なく察しそっと毛布を掛けるように、彼らの唄は、曖昧でぼんやりとした何かにこそ日々があり……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))