桑田佳祐
 
『君への手紙』
 自分で気付ければ、傘をさせばいい。知人がそういう旅をしているのを目にすれば、傘を差し出してあげればいい。だが、なかなか気付けない。旅の途中で体温を失い、路傍に倒れてしまうまで、不思議なことに気付くことはできないのだ。
 だから、表現者は表現をする。比喩的に現されたそういう真摯な表現によって、僕らは自分の苦境に気付くヒントを得る。表現のすべてがヒントになるとは限らない。だが稀に、そんな表現が混じって目の前を過ぎる。この歌も、きっと……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『若い広場』
 この『若い広場』に含まれている要素には贅沢なハーモニー、ストリングス、昭和歌謡の浪漫の模写が高精度なポップ・ソングとして昇華しながら映像もいかにもで、これで和みながらビールを飲む/飲まない人たちの些細な生的な余白に祝福をしている気さえする。なんでも過ぎてしまったら、いい時代だったと言えることもある。それでも、いい時代にでも飛び込むのは今のこの判断としたら、AIやIoTやシンギュラリティなどがどうしようもない状況になっても……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『月』
 アナログレコードが今ブームとのことで、中古レコード屋に行くと結構楽しい。最近は新譜でアナログを出すアーチストも増えてきたものの、数でいえばやはり圧倒的に少ないし、それを買ってすぐに手放す人はさらに少なく、店頭に並ぶのは懐かしのレコードばかり。かつてのレコードには本当のレアものでかなりの高値がついているものもあるが、ほとんどは当時大人気で沢山売られたベストセラーで、1000円以下で売られている。サザンやユーミンに拓郎に陽水、ビートルズ……
 
  (レビュアー:大島栄二)