小谷美紗子
 
『手紙』
 神社に神などいないのではないかと疑う。政治のシステムがもはや平和を担保しないだろうと嘆く。だが、彼女の歌には希望が満ちている。その希望は信じるという自らの信念に在るのだと歌う。なるほどなあと思う。僕などもよく神社に行っては手を合わせるのだが、神社に神がいるなんて実は思っていない。神話に出てくる登場人物などフィクションだと思っている。けれども神社には行く。神社という組織が何をやっているのかなんてよく知らないけれど、家内安全とかは……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『火の川』
 瞬時のライヴ・パフォーマンスをパッケージングした「一回性」には、反復的な永劫性もふと孕む。小谷美沙子というアーティスト名を知っていたとしても、この「火の川」でのダイナミクスと、鬼気迫る叙情性には新旧ファン関係なく響き渡るだろう、人間そのものが持つ業を音楽に接続した際に生まれてくる得も言われぬ何かを感じる。比するに相応しくなくとも、Coccoでもなく、鬼束ちひろでもない、独自のキャリアを歩んできた孤高のフィメール・アーティストの……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))