毛玉
 
『雨降りの午後に珈琲を』
 毛玉は、少しずつ拓かれた方向に進んでいると思う。当初の即興性と前衛性の色合いがあったときからすると、「うたもの」への傾倒が如実にあらわれながら、「うたもの」と括るには浅愚で、MPBからの影響、リズムの複雑さや音色へのこだわりまでふわふわとした安定性の中でのひねくれながらまっすぐなポップ・ソングが増えている。シルキーな質感には、カンタベリー・ロック・シーンに垣間見える歴史の影映と、彼ら自身でも言及している世界的なアーティスト……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『しあわせの魔法』
 こういうイージーリスニングみたいなテイストのサウンドに怪しげな歌を忍ばせてしまうというのは、一体どういう心境というか、狙いなんでしょうね。いろいろな音源を聴いてみるとどれもやはり怪しげな影。でも実験的というか忍ばせ系の意図が先行して、そんなに忍んでないじゃんという感じのある意味意欲的な怪しげ感が多いような気がする、特に昔のヤツ。でもこの曲は怪しげであろうとする想いがちょっと引っ込んで落ち着いて音作りをしているようにも感じられて……
 
  (レビュアー:大島栄二)