処理デキズ『遠くなって』 Next Plus Songsleep warp『gene』
曽我部恵一
『汚染水』
 もう多くの冠詞を要らないだろう曽我部恵一のソロ名義の新しいMVが興味深い。タイトルはそのまま多様に捉えればいいだろうが、90年代のベックのようなバウンシーなファンク。カット・アップされた歌詞と浮かぶ情景、B級的センスが絶妙に往来する映像。ゾンビにボブ・ディランの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」へのオマージュのように、最後は幾つものフリップを投げ捨てる。大衆歌、反抗歌というには、言葉の接続そのものの中、例えば、「君の汚染水を 僕にくれ それはちょっといいアイデア」というフレーズに沿い、“ちょっといいアイデア”が閃く曲。~と~の二項図式が表象されながら、結果的に「絶対的な二元論とは、どこにあるのか」と考察せしめるときの思考の導路には、暗黙の相対性の中で選択される。絶対を回避すると、どうしても固着してしまう概念と並列的に、何らかの「絶対性に向かう」ときには幾つものアイデアを書き殴ったフリップを投げ捨てながら、言葉数を増やすのではなく、「言葉」そのものを奪還する必要性があるのかもしれない、そんなことを想わせるユーモアとシニカルな真摯さに溢れたMVをこの2013年の終わりに発表したのはとても彼らしい。
(2013.12.16) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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