赤い靴『また逢いましょう』 Next Plus SongTorry Konny DOG『五月雨ノクターン』

野坂昭如
『マリリン・モンロー・ノー・リターン』

 数多くの訃報とともに、世代交代の瀬といえども、老いてこそ、培った知識、体験と迫力の凄みを増す表現者もいる。もう齢(よわい)80歳前後となる筒井康隆、大江健三郎は遺作のように、新しい書籍を書き、この野坂昭如もしぶとく表象する行為をやめない。ここでコラボレーションしている、歌謡曲とソウル・ミュージックをベースに、多彩な音楽要素をテクニカルにかつ、パフォーマティヴに今の世に届けているクレイジーケンバンドの功績ももっと評価されるべきだが、野坂昭如が客演した、このライヴから伝わってくるバイタルな情感は狂おしいものがある。1971年のこの曲が妙に時代差を抜きに現在に響いてくるのは、終末観、ニヒリズムと併せて、どこかお気楽にしてブラックな柔軟な日本語の妙もあるからだろうか。00年にリリースされたクレイジーケンバンドのライヴ・アルバム『青山246深夜族の夜』で歌手の彼を知った人も含めて、新しいものだけ懸命に追いかけるのではなく、旧いものにも決して捨てたものではない表現があるというのは追認していってもいいと思う。どちらにしても、「知るか/知らないでい続けるか」の二分線は曖昧模糊な主観判断でしかない。であるならば、知ってみて、果敢ない浮き世を堪能し尽くすのも悪くない。
(2014.4.30) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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