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大江千里
『REAL』

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 今聴いてなぜあの頃みんなあんなに聴いてたんだろうというのがときおり判らなくなるアーチストや楽曲というのはいくつかあるのだが、大江千里もその1人。けっしてカッコいいわけでもなく、声がいいわけでもなく、しかし1980年代後半にはスタジアム規模のライブを普通にやってたし、それもチケット発売がぴあ特電で1時間もしないうちにソールドアウトするという、そんな人気ぶりだった。今聴き返してみると、当時の若者が求めたであろう等身大のメッセージをきちんと歌っているし、当時の主流でもあったYAMAHAのDX-7系のシンセサウンドをキッチリと取り入れた最先端な作りだし、メロディが立っていることも判る。それは荒井由美や竹内まりやなどの時代とも違う、杉真理や松尾清憲たちの時代とも違う、80年代後半を代表するメロディメイカーだったということを裏付けるものだ。同時期に活躍しはじめた小室哲哉が後にプロデューサーとして小室サウンドを日本中に浸透させるが、何かの歯車が違っていたら、大江千里が大江サウンドを浸透させていたとしても何の不思議もないと思う。いや、それは現実になかったのだし、僕個人の何の根拠も無い仮説でしかないけれども。当時のテレビでPVだけを流す番組を深夜にやっていて、このビデオも何度となく繰り返してみたのを思い出す。彼のトレードマークでもあるこの大きな黒ぶちメガネは、当時セルフレームが流行っていたという時代背景の中の最先端だった。しかしその後フチなしメガネが流行し、大江千里の当時の写真を見るにつけ、もうそれだけで古くさい過去の人という印象になってしまっていた。が、このところまた黒ぶちメガネが大流行してしまって、街ゆく若者がみんな「大江千里かよっ」と突っ込みたくなるようなルックスをしてて、うーん、今こそまた大江千里を聴くべきなのかなという気になってしまうし、聴いてみると、やっぱりいいじゃないかと思えてしまうのが不思議なところだ。
(2015.8.22) (レビュアー:大島栄二)
 


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