Girl Band『Paul』 Next Plus Songシナリオアート『アオイコドク』

Julia Holter
『Feel You』

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 “1/fのゆらぎ”とはどこかで耳にしたことがある人も多いと思う。曖昧な用い方をされるものの、音楽では癒し効果があるものとして、例えば、徳永英明の声にはそれがあるとか、また、エンヤの音楽が世界で愛でられる理由のひとつだとか、どこまでのエビデンスか、というよりフィーリングとして、例えば、総合病院の待合室でいわゆる、イージーリスニングやクラシック、ピアノ・ミュージック、アンビエント・ミュージックが多いのはそうおかしいことではなく、モダン・ピアノ・ジャズの名作たるビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デヴィ』は病院の待合室でなにより好まれるアルバムという逸話は有名なのはさもありなんかもしれない。さて、ジュリア・ホルター。彼女の「声」も今、世界で求められているひとつかもしれない。かといって、如何にもな荘厳な含みがある訳ではなく、エイミーマン、フィオナ・アップル、ベス・オートン、ジョアンナ・ニューサム等の系譜に並ぶオルタナティヴな才媛の血を感じながら、アメリカ、LAを起点に多彩な試みを行なっている。安直に“アヴァン・ポップ”と称するには勿体ないその果敢なアティチュードはこの曲の一部からでも感じられるように、一時期のジョニ・ミッチェルが“逃避行”をはかったようなたくましさをおぼえるのがとても、いい。ベッドルームからローファイに外側に接続の果て、何かがシンクする瀬は終わったのかもしれず、もしかしたら、彼岸からベッドルームのなかへ胎内回帰するようにチャントが眠りにつくのならば、彼女の音楽はそれを否定しないだろうと思う。オルタナティヴ(alternative)≒代替可能性、という意味でいえば、彼女は今まさしくそのエッジに居て、思わしくない予感的な何かを逆撫で眠らせる。声は明瞭な政治性を帯びるが、それ以外でもありつづける。この「Feel You」で聴こえるハーモニー、掠める犬は何かしらの代替可能性を帯びているような気をおぼえる。あなたを感じられる時間は限られている。
(2015.10.29) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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