リツコ『第三走者』 Next Plus Songあーた『各駅停車』

早瀬優香子
『サルトルで眠れない』

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 ネットのどこかでこの人の顔を久しぶりに見た。それはCDのジャケットだったか、何だったか。記憶に残る人というのはいる。そんなに売れたのか、それとも売れなかったのか、その辺のことはよくわからないけれども、売上げ以上にインパクトを残した人というのはやっぱりいて、この人も多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。個性的なウィスパーボイスも耳に残るし、今回探して久しぶりに聴いたら記憶そのままで、ああ、懐かしいなと。いやこの人の声を聴いて自分のいつの時代のどういう記憶が蘇るのかといわれても実際には何の光景も蘇らないのであって、単純にこの人の声と表情だけが記憶に残っていることを確認するのみだ。そう思いつついろいろ見ていると、どうもタワーレコードがこの年末年始に過去音源を復刻したりベスト盤を出したりしているらしい。その商品紹介を読んでみると「ジャズやボサノヴァ、ラテンが程良くミックスされ、洗練度が増したニューウェイヴ通過のワールド・ミュージック」と書いてあるのだが、それはこの人の魅力とはまったく関係ないものだろうという気がする。シンガーは1人では音楽を完成させられないことがほとんどで、スタッフたちが懸命に知恵を絞って鎧を身に纏わせるようなサウンドを構築することもあるのだが、そういう場合、その鎧で魅力が隠されてしまうこともしばしばだ。それが早瀬優香子がフェイドアウトしていった理由だと断定するつもりはないけれど、なんてことのない表情に在る彼女の魅力を引き出しているという点で、やはり秋元康ってすごいんだなあと改めて思った。10年くらい前に一時的にネット上に姿を現して、また活動するのかなと思っていたらすぐに消えてしまった。20周年30周年とかで復活するアーチストやバンドが多い昨今だが、彼女にはそんな誰かの口車に乗ることなく、一部の人たちの伝説のまま、謎の存在であり続けてほしいという気もする。
(2016.2.6) (レビュアー:大島栄二)
 


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