Zen Hussies『Too Cold To Hold』 Next Plus SongHearsays『Talking Across The Room』

ガール椿
『テーブル』

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 感動の合唱ソング。いや、ロックバンドのナンバーにそんな言葉は相応しくないと言う人もいるかもしれない。が、考えてみてくれ。バンドがライブを催す場合一本調子の曲ばかりでは客も飽きる。いろいろなシナリオはあるものの、最初に勢いのある曲で盛り上げ客席を温め、中盤でひと呼吸おくためにバラードを入れ、エンディングではみんなが一緒に歌える曲で感動の大円団を迎える、とそういう定番の展開を実現するためには、こういう曲がロックバンドにも必須である。それはある意味ビートルズにおけるヘイジュードのように。ただしその合唱ソングはメロディがそうだからといって期待通りに機能するはずもなく、多くのバンドはそういう曲を持ちたくとも持てずにいるのが現実だし、それでも無理に中途半端な合唱ソングを作ってライブエンディングに披露しても、力のない合唱ソングは客に後味の良さを残すことができず、ライブバンドとしての魅力を削いでいくことにしかならない。広島のロックバンドガール椿のこのテーブルがライブの中で一体どの辺りで演奏されているのかはよく知らない。ライブによってやったりやらなかったりなのかもしれない。この映像は2013年の4月ということで、だからおよそ3年が経過した今あまりやっていない曲なのかもしれない。それはわからない。だが、この曲はライブのエンディングを飾るに相応しい珠玉の合唱ソングだといえよう。淡々と語るように歌われる言葉は断片的な具体的風景を描き、それを畳み込むように連ねていて、目を閉じて聴いていれば光景が浮かんでくる。ビデオを作る時にそういうシーンを集めて並べていけばそれなりの作品はできるだろう。だが、そんなことをしなくても言葉がそれをリスナーの脳内に想起させるパワーを持っていて、だからライブで彼らが演奏している姿の方にリアリティを感じられるのだろう。冒頭のギターと歌だけの部分でベーシストはベースを抱え、ドラマーは直立して共に歌う。その姿を見ると観客も歌いたくなってくるだろう。そしていくつかの歌詞が連なることによってけして明るい未来ではなく、諦めにも似た終末を感じる。その後に繰り返される「誰かの最後の願い」のために自分たちは「ここに残る」という宣言。バンドとは自分のエゴをバラまくためではなく、多くの人たちの心のために存在してるんだということをあらためて実感させてくれる。その宣言に、聴く者はこのバンドを信頼して心を寄せることができるんだと確信できる。この曲をライブの最後に聴いた観客は、複雑ながらも幸せな気分で家路に着くことができるだろうと、そう感じられる名曲だと思った。
(2016.2.11) (レビュアー:大島栄二)
 


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