Animal Collective『FloriDada』 Next Plus SongDinner Set『Coin Laundry 2』

菊地紗矢
『四半世紀の孤独』

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 どんな人も社会の中での笑顔と心の中の闇の2面を持っている。本当の心を見せながら生きるには社会というのは敵が多すぎるから。だが誰もが心の中をひた隠しにしてしまえば、こんなに闇な心を持っているのは自分だけなのだろうかと滅入ってしまうわけで、だから、アーチストというのは自らの闇をさらけ出すことによって多くの人を救うのではないだろうか。この菊地紗矢という人はそこそこ長い活動歴を持っているようで、検索すればグランドピアノを弾き語っているライブ映像がごろごろ見つかる。ピアノを弾きながら歌うというのはもうそれだけで正統派という印象もあって、だからそういうライブを見ている限り、表面的に見てしまっている限り、そこには社会に向けた笑顔しか見えてこない。だが、このほぼ静止画のビデオクリップを見るとどうだ。サウンドはピアノ弾き語りよりもかなりポップ。ポップなサウンドは通常は心躍るようなウキウキ感を催させてくれる。だが、この曲は淡々と歌われることで言い様もない闇を垣間見せる。それはまるで笑顔で闇を語るようなおどろおどろしさだ。怪物が怪物の顔をして、叫びながら唸りながら闇を伝えようとしてもその容姿が与える最初のインパクトを超える怖れになることは少ない。品行方正な人が語るちょっとしたズレ。そういうものの方が恐怖を感じるには相応しいのかもしれない。この人には、いろいろな闇があるのだろう。それを巧みに見せてくれているのだろう。その闇はけっして特別でもない、誰もがきっと心に抱えているような種類の闇。だからこそリアルで、だからこそ怖い。それでも社会は日々は生活は続いていく。僕らは笑顔をふりまきながら、アーチストは淡々とスケジュールをこなしながら。
(2016.2.18) (レビュアー:大島栄二)
 


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