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Special Favorite Music
『Magic Hour』

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 悪いことや気が滅入ることばかりで憂鬱や絶望的な何かに駆られるばかりではなく、良いこと、栄転や出世、また「五月病」なんて言葉がなかなか消えないのは3月、4月が良きにしろ、悪きにしろ、変わり目だからで、上がっていても下がっていてもどこかで肩に力が入っていたり、無理をしているということなのだろう。

『夜と霧』という、アウシュビッツでの強制収容所体験を記したV.E.フランクルはクリスマス明けや新年に直接的な言い方は避けるが、打ちひしがれてしまう人が多いと云う。それはこれだけ冷酷な状況下で救いがないのは分かっていても、どこかでクリスマスや新年といった「ハレ」の中では何か起こるのでは、という人の内在心理があるからだとする。

 Special Favorite Music「Magic Hour」。全てがロマネスクで出来上がっているようなバンド名と曲名だが、音楽が現実に応する力を改めて感じられる軽快さとやわらかな空気がここにはあって、それはどうにも「無理」しないといけないときが多いこの現実をほのかに持ち上げてくれるムードがある。クラムボン、cero辺りにも通じながら、昨今のシティポップという流れからも少し違うのは、管弦楽が入った8人という大規模なバンド編成に依るのかもしれず、同時に、スムースで流麗にこの曲でも歌われているように「旅に出よう」というポップ・ミュージックの持つ、聴いているだけで不思議な、旅する感覚が柔和に浮揚しているようなところがあるからかもしれない。

 色々疲れたら、少し肩の力を抜いて、マジック・アワーに浮かんでみることもたまにはいい。そこも、決して夢見空ではなく、「日常」と地続きにある訳だから。
(2016.5.13) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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