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かたすみ
『壁の中で会いましょう』

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 かたすみという名前のバンドが、壁の中で会いましょうと歌う。歌詞やメロディがどうであっても、もうこれだけでワクワクする。昔は普通にあったいわゆるジャケ買いというものと同じような衝動を感じます。どんだけ世界の中心で叫んでいないんだと思わず突っ込みたくなる。いや、世界の中心で何かを叫ぶほどダサイこともなかなか無いんですけれども。で、どうですか。聴いてみて、どうですか。僕は、好きです。ハイトーンボイスのキーなのか、それとも無理矢理出しているのか、一瞬B'z稲葉かと思うような迫力の後に微かに掠れる。この微妙さがとても好き。それを衒いなくやりきってるのが、好き。そういうのを好きということの微妙さもよく理解しつつも、なんか好きなのです。2人は壁の中で会いましょうと連呼するんだけれど、もし実際にそんな風なラブコールを受けたら、行きますか?会いに行きますか?いや、会いに行ったりしないでしょう。というか、壁の中で会うって、どうすればいいのかもわからないし、そんなわからないことを言ってる男とつき合ったら将来苦労するだろうし、会いに行かなくて正解だと思います。でも繰り返してよく聴いてみると、「約束を果たせないままここに立っている/目の前には見えない壁がいくつもあって」と言っていて、だから会うべき「壁の中」というのは物理的な壁のことではなくて、2人が会うために乗り越えて行くべき障壁と考えるのが妥当なのでしょう。だから日本語表現としては壁の向こうで会いましょうという方が正確なのだと思います。でも、これが「壁の向こうで会いましょう」というタイトルだったら、出会った時にこんなにワクワクしたかというと、してませんね、絶対に。だから、この奇妙なイメージを想起させる「壁の中」というフレーズがやっぱり正解だったのでしょう。良い歌です。
(2016.5.20) (レビュアー:大島栄二)
 


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