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前野健太
『今の時代がいちばんいいよ』

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 なんということもない描写で淡々と平和というものを描こうとする。具体から具体的な固定のイメージを結ばせるのとはまた別の、具体からそれぞれの具体をそれぞれに結ばせようとする。前野健太の表現は本当に面白い。昨年末にCDではなくCD付き本という形で主に書店で販売される音源としてリリースされた最新作の、タイトル曲がこの「今の時代がいちばんいいよ」。リリース直後に買って聴いたときにはサラリと流して聴いてしまったが、今あらためて聴きなおすと、4曲目からの4曲、「このからだ」「100年後」「新幹線の速さで毎日は」「私の怒りとは」という一連の流れが凄まじい。ミュージシャンが政治を声高に語るやり方とは別に、ミュージシャンが淡々と歌うというやり方もちゃんとあるのをあらためて確認できる。そのどちらが正しくてどちらかが間違いということではなくて、こういうやり方も、静かにだけど強烈に意志を表示するという。それは別に政治というものを殊更に強調するのではなく、人間とはなにか、生きるとはなにか、そういう日常にある淡々としたものや感情をきちんと捉えて淡々と歌う、そういう変わらない姿に、変わらないという強さと意志を感じられて心強くなる。3分ちょっとの動画の最後に通りすがりのお客さんが声をかけて去っていく。そのやり取りが、そのやり取りをわざわざ残すというところに、どんな意図があるのか。それは聴く人見る人がそれぞれ感じればいいのではないだろうか。
(2016.7.1) (レビュアー:大島栄二)
 


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