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婦人倶楽部
『グルメ紀行』

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 通り道の公園で、ずっと使用中止だった水飲み場が直っていて、それを使って楽しそうに子供たちが遊んでいるのを見て、使用中止前の光景を巻き戻してみたが、やはり違う。今はそこの公園での子供の絶対数も少なければ、多様な国の子が混じっている。その公園以外でも、そこに“在る”ものの、老朽化したブランコ、滑り台、ベンチ。また、「近隣住民の迷惑にならないように、大声をあげないよう」みたいな警句も増えた。

 先日、総務省が2015年の国勢調査(速報値)で、65歳以上の人口が3,342万人2千人になった、と発表した。それを同工異曲で極端に語るアフォリズムより、使用中止だった水飲み場を開放することで生まれる景色をリスク・マネージメント込みで想うと、高齢社会やノイジーマジョリティ、良識派の不条理な圧力の中、聞こえる小さな声も必然と拡張される。

 眼鏡越しに変わるスクリーン、AIやVRの発展で、荒みと霞みを孕んだ現実にそれぞれに筆を添えることができる可能性は悲観や憂慮もあれども、きっと良い部分もある。牧歌的なシティーポップなようでシニカルな諸因子が垣間伺えながら、リフレインが妙に残るこのMVを見ていると、背筋がただされる感じもある。こういう捉え方で現在を視ていけば、別位相で「愉しめる」こともあるのだという気付きも大きく。地上波のTVでも、『笑点』が(メタに)ベタに多くの人に愛される瀬で、雑誌の取材で現司会の春風亭昇太が「あまたの放映プログラムの中でガラパゴス化したゆえの良さ」を語っていたが、絶滅危惧種を守り過ぎるのか、絶滅をただ俟つのか、ポージング次第で、相対的価値にメスを入れることができる。

 2014年に佐渡ヶ島の主婦にて結成された婦人倶楽部。じわじわとその活動が拡がり、気付いた人たちが小さくも繋がってゆくのが興味深かった。プロデューサーにはムッシュレモン(カメラ=万年筆、佐藤望)、アートワークに写真家の川島小鳥、そして、気鋭の音楽家が多数、参加し、実在の佐渡ヶ島の主婦がクリティカルにポップに映る。ここの捻じれを冒頭の、まだ開放されたままの水飲み場から今一度、考えてみよう。答えはなくても、ある面でなにかと諦めてしまうのはまだ早そうだ。
(2016.7.7) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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