Whitney『No Matter Where We Go』 Next Plus Songオールドタイマー『Jelena』

石野卓球
『Rapt In Fantasy (Radio Edit)』

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 AI、FinTech、VR、ブロックチェーンなどの高速度で定着する(ような)概念群にどこまでの人がついていってるのか解らないけれども、良質なアプリからカクテルパーティー効果的にその個人にとっていい音楽を選んでくれるサービスが出てきだすと、何だか杞憂より未来の真ん中に居る様な気がして悪くはならない。「自己」探訪より、「自己」をよりプロテアン的に結うことで変わる幻像の中で、誰かのブランニュー・ミュージックはトラップやカラオケ塗れになっていて、当の本人がコメントを出しても真偽を問われる。文化的な何かは正直なところ、高度資本、功利主義の中では後次になってしまうのかもしれない。それより、まず“コートに立たないといけない”からで、そこで鳴る書籍や、読める音楽は軽んじられてしまう。だからショート・カットされた結果、うまく回路をつなげたポケモンGO的な中での発見が重宝されるのも道理なのだろう。巷間のEDMや即効性、ダイレクトな諧謔に反して、電気グルーヴの石野卓球の久しぶりのソロ作はいわゆる、エロティック、蠱惑的なという惹句ほどでもなく、ただ、滑らかにハウス・ミュージックの元来の良さ、ダイバーシティ・インクルージョンにおけるLGBTの意味の内奥をもしなやかになぞる。このMVのモティーフも幾つかの示唆がダダやシュールレアリスモ的だったり、なんとなく今の世にはアブストラクトなものが受けにくいところの隙間を縫うように、それでも、元ネタは辿られてどこかに漂流し、まとめられていると察する。電気グルーヴというグループの偉大な軌跡より、こういう音楽をリリースすることそのものが今のシーンにはあらゆるカウンターになり、彼の今作を巡る一連のインタビューを読んで、そのバランス感覚とユーモアとあえてのサーカズムには勇気づけられる。ほんの刹那にアディクトし続ける時期も必要だが、ときに月の満ち欠けの周期に細部の意識を巡らせられるのは大切なことだと切に思う。単曲じゃなく、アルバムを通しての心地良さもあるだけに、このMVに興味が魅かれたならば、是非、他の曲も聴いて欲しい。
(2016.8.25) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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