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My Hair is Bad
『優しさの行方』

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 天変地異と政情変化の大きなうねりの中で翻弄されるのは止むを得ないにしても、世界中で個々のこれからの生活への不安を殺伐とした何かに変換するより例えば、ビットコインが生み出す可能性や掘り起こされる新たな小さな町に目を向けてもいいような気がしていたら、自身の知己があることで亡くなり、そういう厳しさの中を生きているのだと噛み締める。愛や夢や希望がそのままに響くとは勿論、思わない。この歌詞にあるように「本当のこと」を知りたくない。でも、知らないと進めない。絶望や暗渠に留まっていてもキリがないゆえに。

 彼らのサウンドには、なぜかしらあの90年前後のグランジの感じと、ポスト・パンクを経たネオアコの清々しさを同時に感じる。サリンジャーやウィリアム・ブレイク的な美辞も。汚泥に塗れた川の魚を食べて過ごしていたカート・コバーンもとうの昔に、そして気付けば、ずっと生きると思っていたデヴィッド・ボウイもプリンスも居なくなってしまった瀬で、高速度で回転する現実への適応するための悲しみと虚しさを歌うためにフィードバック・ノイズの中で少し甘い声で青く歌うのがなによりのレジスタンスかもしれないとさえ思える。

 そして、風景も楽器になる。彼らのその風景の描き方がクルーエルで身近でとてもいい。

 新曲も出ているなか、旧曲をあえてピックしたのは「優しさの行方」がざらついていたとしても、今日は続いていって、鬱蒼とした森の中に悲愴な怒号みたくメッセージがぐちゃぐちゃの髪のセットのように響けばいいような今によせて、という意味が大きい。例えば、バンクシーのメッセージの行方が真っ当になっていることが増えたように。
 整えられているシステムの外側から、あの子のこととか日々のことを。

 だから、時おりでもいい心の鍵はあけておこう。いい予感が訪れる可能性はあるから。フィッシュマンズの曲のように「窓をあけておく」といいし、入ってくる空気は悪いものじゃない。
(2016.10.14) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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