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ircle
『光の向こうへ』

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 明るく前向きなロック、といえばいいのだろうか。投げる球種はストレートだけですというような印象で、ひねくれ加減だけで勝負するバンドが多い中、こういう曲には逆に好感が持てる。でも、いや待てよ、ircle(アークル)ってどちらかというとひねくれというか、歌詞にも曲調にも一筋縄じゃいきませんよという反骨精神が溢れまくっていたバンドじゃなかったか? プロフィールによると2001年に大分で結成したというから、ある意味ベテランバンド。結成当時は中学生なので、そこからスタートしてベテランというのがどうかという問題はあるだろうが。で、他の曲を聴くとすぐにわかるけど反骨のオンパレード。だからこの明るく前向きなロックが彼らの中でいかに異質なのかは誰の眼にも耳にも明らかでしょう。なぜこういう曲を前面に出してきたのか、作るようになったのか、そういうのがとても興味あります。ヒネクレの部分はある意味バンドの背骨のようなもので、ストレートな曲を作るようになるとずっと聴いていたファンの中には「なんかつまらなくなった」という想いを抱いて離れていく人も出てくるはず。そういう人はこの変化を「日和見」と呼ぶでしょう。でも、僕は「進化」だと思う。たくさんいるバンドの中で目立つためにはちょっと変わったことをやるのが早道で、だからみんなそういうものをやるし、それを「オリジナリティ」と思い込むことも多い。だが、そういうのは一部の例外を除けば単に化粧をしているだけに過ぎなくて、気がついてみたらみんな同じ化粧をしているものだから結局目立ててない。本当のオリジナリティはスッピンにこそあって、だから重ねてきた化粧を落としてみることで本当の自分を出していけるようになる。ircleもこういう曲を前面に出してくることによって、彼らがこれまで重ねてきた「化粧」を落とすことにつながるのではないだろうか。いくら変化球を何種類も投げられたとしても、ストレートに威力の無い投手は三振を奪うことなど無理で、だから、この曲が彼らの本当の武器になるのではと、そう思います。もしかするとこの曲ではなくて、次の曲また次の曲なのかもしれないけれど、三振を奪う実力派バンドとしての道を歩み始めた第一歩なのではないかと期待したい気分になります。
(2016.10.21) (レビュアー:大島栄二)
 


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