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THE NOVEMBERS
『1000年』

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 ロックとは何かと常に考えている。それが音楽ジャンルではなく生き様だという意味はもちろんだが、単なる音楽ジャンルとしてのロックも、常につかみどころの無い得体の知れないものとして僕らの前に横たわっている。この曲もそんな横たわるロックのひとつだ。THE NOVEMBERSの曲は以前にも紹介したが、その時の『今日も生きたね』という曲は静かに哀しみ深く、しかしながら暗い平安を感じさせる不思議なもので、2年前の僕の脳髄をシェイクするような衝撃を与えてくれた。アイロニカルな言葉を噛みしめるように何度も聴き、聴いてはまたその意味を量りきれずに繰り返し聴くことになった。THE NOVEMBERSが今月になって公開したMVは2年前の『今日も生きたね』とはまったく違ったテイストの、スクリーモかと思うほどの激しい曲。美しいと思った。単曲で聴くだけならともかく、アルバムを通して聴いたり、ライブに行って轟音を浴びたりする場合、単に解りやすいということにはあまり価値は無い。大きなスピーカーから飛び出してくる音は歪んで歪みまくって時には割れて、その場にいる者の耳を焼き尽くすような音に揺さぶられながら、その中に自分の身を置くことがロックの愉しみでもある。それを予感させるこの曲は、まさにロックであると心底感じる。
 言葉があまり聴き取れないような歌唱で、だから何を歌っているのかもよく判らないというのが正直なところだが、YouTubeのMVの情報欄には丁寧なことに歌詞が掲載されている。それを見ると「美しさ、俺を体温で燃やせ」とある。それはどういうことだろう。どういう意味なんだろう。考えても考えてもその動画とパフォーマンスは美しく見えるばかり。勝手な解釈だが、「美しさのためなら自分など無価値に等しい」ということなのだろうか。その考えを裏打ちするように、彼らの映像は、そしてサウンドそのものが美しい。彼らが一環して伝えてきた言葉というものさえサウンドの一部として溶け込み、意味を喪おうとしている。意味が併記されるような美しさは、本当の意味での美しさではないのかもしれない。少なくとも、音楽に於いては。
 今回のレビューがmusipl.comの1000個目のレビューとなった。音楽が以前ほどには若者文化の中での影響力を持たなくなる昨今、でも音楽に価値がなくなったわけではない。だからそれを少しでも人に伝えていければと考えてこのレビューサイトを始めたのだが、こういう音楽の美しさを目の当たりにすると、言葉を添えることの無力さを感じざるを得ない。だが、では、言葉を添える以外に、音楽の前を素通りする人たちの耳を向けさせる術はあるのかというと、今のところ他に方法が見つからない。音楽の前に言葉は無力かもしれない。だが完全に無力なのでもない。あくまで曲がサウンドがすべてだとは理解しつつも、その面白さ、美しさに眼と耳を向けさせるための前座として、これからもレビューし続けていきたい、淡々と。
(2016.11.12) (レビュアー:大島栄二)
 


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