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フジロッ久(仮)
『逆らえ!』

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 無茶苦茶だ。この音符の凝縮度。ただただBPMを上げるというのとはまた違った、決まっている小節の中にこれでもかと音符を詰め込む作業。速度はけっして上がっていないのに音符が詰め込まれていくことで全身の血が沸騰しそうな感じ。これは良いよな。音符というよりもリズム隊の無闇な叩きまくり。ヘビーメタルのドラムソロを5人のドラマーでやってるのかと思うくらいで、ある意味小気味よい。フジロッ久(仮)の曲はその曲調スタイルの点でいえば必ずしも一定ではなくて、だからこの音符詰め込み過ぎリズム刻み過ぎのテイストは他の曲には通じないもので、だからこの1曲をもって彼らの音楽だと思い込むのは早合点に過ぎない。だがどんな曲にも通じている彼らのエッセンスのようなものもちゃんとあって、それは、優れたメロディセンスだ。彼らのウェブサイトにもあるように「雑食性の高いサウンド」も彼らの大きな特徴だが、その雑食性の高い幅広いサウンドスタイルと、そのベースとなる実験的かつアグレッシブな姿勢に人並みレベルの音楽ファンが必ずしも付いていけるとは思えない。だがそのリスナーを置き去りにするようなアグレッシブさにも関わらずファンを獲得し続けるのは、この卓越したメロディセンスの確かさが大きいのだろう。アレンジを変えてシンプルにギターで弾き語れば現代のスタンダードソングになったとしてもけっして不思議ではない。無論それはフジロッ久(仮)の音楽だとは認識されないのだろうけれども。その彼らが歌う「逆らえ! 仕方なくない/疑え! 誰かの理念」というこの曲は、彼らが独自の道を突っ走っていることともリンクするようで感慨深い。誰かの理念を疑って自分の道を行くというのは、聞こえは良いが簡単なことではなくて、それは凡庸なバンドがスタイルの形式だけを真似したところでけっして名曲など生まれないというのと似ている。彼らのように、背骨のようにしっかりとしたメロディセンスが有って初めて、この独自なサウンドへの挑戦も意味を成していくのだ。
(2016.12.1) (レビュアー:大島栄二)
 


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