ぼくのりりっくのぼうよみ『after that』 Next Plus Songアマアシ『連鎖』

YeYe
『He Doesn't Have Christmas』

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 クリスマスって淋しいイメージしか持ったことがない。楽しげなイベントというイメージが一般的なのかもしれないが、どうしてもそう思えない。友だちや家族と集まって、豪華な料理を食べ、ケーキを分け合い、プレゼントを交換する。生まれてからずっとそんなクリスマスばかりを過ごしてきた人ってどのくらいいるんだろうか。「Do they know it's Christmastime at all?」とバンドエイドは歌ったし、それはアフリカで飢餓に苦しんでいる子供たちの状況を世界に知らしめる活動の一環だったわけだが、じゃあクリスマスを知っていることはどのくらい幸せなことなんだろうかと当時思った記憶がある。クリスマスだよ、クリスマスであるぞよと世界がこれでもかとクリスマス光線を浴びせてきて、でも友だちと集まったりしないんだよ。ケーキ買ったりもしないんだよ。街で大きなツリーやデコレーション、イルミネーションにライトアップなどが溢れて、行き交う人たち全員が幸せに包まれているのではないかという強迫観念が襲ってくる。自分はそこから落ちこぼれているのではないかと。このYeYeの曲ではショッピングモールの明るい照明の中をYeYeが1人でギターを弾きながら歌い歩く。周囲の人は「この人、何だ?」と奇異の目で見ているだろう。或いは、見ていないフリ。クリスマスの明るい街を歩くってそういう気分。幸せな人と、そうでもない人。その区別は実際には無いんだけれども、このビデオのYeYe側だと感じる人と、それを見て見ぬフリをする人と。自分は一体どっちなんだろうか。どっちであっても、「He Doesn't Have Christmas」と歌う人に楽団がひとりひとりと合流してくる。いずれも幸せ満点という印象の人ではないのが良い。そしてショッピーングモールの外に出ていって、人通りの少ないところで、演奏のスピードは速くなっていく。歌詞は「Christmas Christmas coming to us」と繰り返される。曲の最初では祈りにも似た独白のようだったが、仲間が集まった時にはそれが確信のように聴こえてくる。あたかも神戸ポートタワーが巨大なクリスマスツリーのようにさえ見えてくる。次のクリスマスこそは楽しいものになるのかもという希望も心に灯ってくる。音楽の力は偉大だな。クリスマスを持っている人にも、持っていないと感じている人にも、幸せな何かが訪れますように。
(2016.12.24) (レビュアー:大島栄二)
 


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