Jamie T『Tescoland』 Next Plus SongBrian Eno『Reflection』

ねぇ、忘れないでね。
『無題』

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 ハッとする。イレギュラーなタイミングで差し挟まれる「世界は」のフレーズ。これが繰り返されるうちにハッとする気持ちがどんどんと焦燥に変わっていく。曲の作り方の基礎の基礎として、Aメロ+Bメロ+サビみたいなものがあって、それが起承転結というか序破急というか、そういう物語の展開のように使われることは多い。だがこの曲ではちょっと違ってて、AメロBメロで描写が行なわれ、サビでは描写ともいえないフレーズが繰り返される。そのフレーズの繰り返しがAメロBメロの描写を補強するような形、いや、補強というより増幅というべきか。こういう構成の曲は、無理に説明されない分だけ引き込まれるような気がするのだが、どうだろうか。同じような構成の曲ってあったよなあ、何だったっけなあと考えていて思い至ったのが、チャゲアスの『YAH YAH YAH』。あらためて聴きなおすとけっこうとんでもない歌詞で、「これから殴りに行こうか、YAH YAH YAH」って一体なんだよこの暴力的な歌はと驚くが、「YAH YAH YAH」というサビの無意味な繰り返しが、聴いてて無批判に盛上がってしまう要因だったのだろう。一方(と比較するのもどうかとは思うが)自傷的な内容を含んだこの歌も、チャゲアスとは逆方向に問題を抱えてて、それはまあ、「YAH YAH YAH」がバブルの頃で、こちらが失われた20年のその後という、それぞれ時代の成せる技なのかもしれないが、印象的なフレーズながらもたいした具体性を持たないサビの繰り返しが、リスナーの健全な批判的精神を簡単に無力にしてしまうのかもしれない。そう考えると、音楽って怖いほどの力を持った表現なんだなあとあらためて感じる。
(2017.1.26) (レビュアー:大島栄二)
 


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