!!! (Chk Chk Chk)『The One 2』 Next Plus Songippuku『ヨルノセイ』

airlie
『ura/omote』

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 若い人の向上心は時として自分を撃ち抜く凶器となる。まだなんでもない被保護者としての幼児からいかにして脱却するのかが誰にとってもテーマで、その中でもがき、苦しむ。同じ何者でもない集団の1個にしか過ぎなかったはずのクラスメイトがそこからひとりふたりと抜け出していく。自分が置いていかれる。自分だけが置き去りにされる。その置き去られた何者でもないものの場所に取り残されて、焦る。自分を責める。誰かを妬む。そんなことしているヒマがあるなら脱するための何かをすればいいのに。それが出来るくらいならこの世界から悩みなんてものは消え去るんだよ。
 ある程度歳を重ねていくといつの間にか自分がそんな置き去られた場所に居ることなんて忘れて、今度は残っている時間の短さに気付く。何者でもなかった頃の自分にあったはずの真っ白な可能性を羨むことになる。若さへの嫉妬も自分を撃ち抜く凶器になる。もし、仮に残された時間にエクストラで30年与えられたところで、今の何者と違った何かになれるなんて保証はどこにもないのに。
 airlieというまだ無名のシンガーの歌に、僕は2重にも3重にもハッとする。若い人の焦燥と、老いた人の焦燥は、似ているようで違ってて、違っているようで結局は同じで。そのことに、若い頃には当然気付くことなく、老いてもなお気付くことは難しい。結局は同じなら、若い頃に置き去られているはずの「場所」が、別に置き去られてなんていなかったんだ。そのことを若い人にどうにかして伝えたいと思うけれども、同時代に生きていながら届く言葉を持たず。じゃあ若い人に伝えられないのならせめて老いる自分にちゃんと伝えられればいいものを、それがちゃんと伝えられるのかさえ心許ない。
 歌の最後に「情熱はまだ燃え尽きてはいない/静かな叫びに込めて戦う」とあって、嬉しくなる。その気持ちがある限りまだまだ大丈夫なんだと、何の根拠もないけど思う。
(2017.5.18) (レビュアー:大島栄二)
 


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