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空中カメラ
『恋するシャボン玉』

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 たとえば、苛立ち、どこかピリピリと神経が張り詰めているときに食事を、と思うと梯子を外すとうまくいきやすかったりする。相手がラーメンか丼の眼をしているときに、ベトナム料理のお店があってカレーもありますよ、となんてリーディングすれば、それとなく落ち着く。得体のしれないものは怖い、誰しも。でも、知っている人の推薦で外れくじを引くのは悪くない、そういう損得勘定も働く。すべてを放題にしてしまっては駄目な理由はどこかでの限定性をもたらせないと、人が社会内家畜化されてしまう危惧があるということでもあるのかもしれない。

 空中カメラはとても真摯で、茶目っ気溢れる先を見越しているポテンシャル溢れるバンドだと思う。この曲に限らず、彼らの良さには、或る程度の年齢を重ねた筆者からしたら雑多な音の玩具箱の中にサイケをやや抑え気味なフレーミング・リップスやはっぴぃえんど、風などの和趣と浪漫、更にはレフト・バンク、ハーパーズ・ビザール辺りのソフト・ロックの滑らかさとポップでプログレッシヴな、あたかもフランク・ザッパのざっくりとしたベストを聴いたときのぐるぐると頭が情報量を越える感覚を持ってしまう。でも、スマートな方々ゆえのメンバーのセンスが滅茶苦茶を破綻やカオスの前でしっかり音楽として届ける様がある。

 そんな編集感覚の鋭さは先日に『ベイビー・ドライバー』という映画を観たときにも感じたのと似ているのだが、今は感覚が音楽表現に近付いていると言える側面はあるのかもしれない。その音楽の中でずっと前かがみで生きていた人がふと顔を上げるとき。その逆でも良い、みんなのうたは褪せていっても、個々にとってのうたが滋味深く胸の奥深くに差し続ける。優雅な余韻で。

 この時期になってしまうと、2017年をどこか衛星のように見ていた気さえするこのMVも音楽もお茶らけもオマージュの束も、受け手側が追い詰められることなく、見晴らしよく受けとめられると思えてしまう。ピース。

     君との距離を楽しんでる ぼくら恋をしてる
              (『恋するシャボン玉』)

いい歌詞だな、と思う。
(2017.9.4) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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