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永久らんど
『旅立ちの歌』

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 大阪のバンド。土臭い。言い換えるなら汗臭い。それは決して批判の言葉でなどなく、このバンドがリアルだという証のようなものだ。校舎の後ろに山があり、田畑が広がる。風が吹けばきっと土ほこりが舞い上がる。日本全国にはあたりまえのようにこういう光景が広がっているが、都会に暮らしてしまえばそんなことは存在しないかの如く忘れ去ってしまう。バンドマンも活動の場を求めて都会に向かう。本当の田舎にはライブハウスもスタジオも無いからだ。そうやって音楽は都会の香りをまとい、いつしか土ほこりのことを忘れていく。もちろんこのバンドの活動拠点も都会だ。HPのライブスケジュールを見ても「心斎橋」「下北沢」という地名が並ぶ。それは仕方のないことだ。しかし、その音楽の中に土臭いにおいが残っているのであればもう十分だという気がする。旅立ちを歌ったこの曲は、「ねえ私たちここにいて何か変われたかな/ねえ僕らここにいて日々を愛せたかな」と問いかける。普通に考えれば、田舎の暮らしで変化できるのかという疑問を持ち、変わるために都会に若者が向かう、その心情を歌っていると考えることができる。だが、僕は思うのだ。都会に出る人は多いが、では都会に出て何を変えることができたのかと。旅立ちとは、常に変化を伴う。それは田舎から都会という象徴的な一方通行なのではなく、今いる場所から、違う場所へということ。両者を比較することで自分の今を、そして過去を再確認し、未来へとつなげる行為なのではないだろうか。彼らの歌が、田舎に立脚してなおかつ力強い。それは変わること無い土臭さを忘れ去ってしまっていないからなのだと思うし、そのにおいを持ち続け、心斎橋や下北沢で撒き散らしていってもらえればと切に願う。
(2018.3.5) (レビュアー:大島栄二)
 


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