Courtney Barnett『Nameless, Faceless』 Next Plus Song白いベランダ『街の白い手』

バレーボウイズ
『ひがしのまち』

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 不思議な熱を帯びている歌だ。彼らのHPには「昭和歌謡テイストなメロディといなたい歌詞」という言葉がある。この歌を「昭和歌謡テイスト」というにはちょっと無理がある。昭和歌謡っていったい何なんだろうか。もうすぐ平成も終わる。次の元号になれば昭和というのは2つ前の時代になってしまう。つまり昭和生まれの人にとっては明治時代ほどの遠さの時代に、昭和はなるということだ。そりゃそうだ。すでに30年も前の話で、現時点での「若者」はみんな昭和を知らない。彼らにとって昭和歌謡というのは大正デモクラシーくらいの歴史上の何かなのだろう。その昭和を、今の平成の文化は引きずっていると思う。それは文化を創るのが若者世代であっても、それを流通させるメディアの幹部が完全に昭和の人たちで占められているからで、最近でも朝ドラに出てくるのは古い人ばかり。昭和のドラマを彩った人たちが画面に溢れる。今日本映画がたくさん作られているのは、若手俳優がテレビに活躍の場を得られにくいからだという話もある。若手俳優ならギャラも安く制作費も押さえられるし、シネコンの多スクリーンを埋めるために必要な本数を賄うにもちょうど良い。テレビはというと画面の前にいるのは昭和の人たちばかりだから、高齢となった俳優は主にそちらで活動するそうだ。そんなことを考えながら聴いていると、この曲は合唱曲なのだなと思えてきた。朝ドラの「ひよっこ」でたびたび出てきた合唱。寮で合唱サークルがあったり、家族対抗歌合戦で「ナミダクンサヨナラ」を歌ったり。なるほど、昭和歌謡というのは小島麻由美あたりが90年代にムーブメントを起こして以来連綿と続く音楽ジャンルのことではなく、合唱ソングのことなのではないのだろうか。いや、違うかもしれないけれども。MVを見る限り、歌っているのは3人だけで、HPのプロフィールを見てもボーカルは3人で。で、プロフィール欄には「みんなで合唱しようぜ!それがバレーボウイズ!」と書いてあるじゃないか。うん、僕の見方はわりと正しいなと自信を持ったよ。京都精華大学の学園祭に出演するために結成と書いてある京都のバンド。京都以外の人には京都精華大学と言っても何のことなのかピンとこないかもしれないけれど、結構トガった芸術系の大学。そこの学祭をきっかけに結成というだけで京都の人ならワクワクしたりするし、表面的なほのぼの懐かしい感の裏に、きっとトガった何かを抱えているんじゃないかなあと期待したりするのですよ。
(2018.5.10) (レビュアー:大島栄二)
 


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