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錯乱前戦
『ロッキンロール』

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 ロックンロールはもはや時代遅れだという。オッサンの音楽だという。本当にそうか? かつては世の中にロックしか無かった時代があって、やがてそんなシンプルな音楽ジャンルじゃないんだよオレたちはという人たちが新しいジャンルの言葉を生み出したり、DTMの機材が進歩するにつれて音楽そのものが本当に新しくなったり、そんな中でいろいろなジャンルが出てきては消え、出てきては消え。いや、消えてはいないんだけれども流行ではなくなったりしていって。ついこの間登場してきたと思っていたEDMももう古いのだとか。エレクトロニカはどうなんだ。シューゲイザーはどうなんだ。スクリーモはどうなんだとか言っているうちに訳わからなくなるんだけれども、じゃあやっぱりロックンロールは時代遅れなのか。いや、時代遅れなんてレベルではなくて、もはや古典なんじゃないのか。そんな気分になることはたしかにある。
 でも、この曲を見てくれ、いや聴いてくれ。このインパクト。たしかに古典的なところはある。ベースの展開なんてロックンロールの王道というか教科書通りともいうべきコードのループで、だから音楽的な新発見なんてありやしない。だが、カッコいいよな。やっぱりロックンロールが1番カッコいいって思わせてくれる。よく「ロックは音楽ジャンルではなく精神性のことだ」といわれるし僕もいうのだが、こういうバンドに遭遇したら、それは本当にそうだよなあとあらためて確信する。ロックンロールが時代遅れというのではなくて、ロックンロールにふさわしいバンドがしばらく出てきていなかったというだけのことで、そういうバンドが出てくれば、ロックンロールはまたシーンの中央で光り輝く、それだけのことだろう。
 このビデオ、イントロで鳴り響く赤いギターがストラップを縮めてておなかのあたりで弾いているのがとてもカッコいい。ドラムの音がかなり乾いた感じでコンパクトに鳴っているのがカッコいい。メンバーを横から捉えているカメラが固定のはずなのに揺れているのがカッコいい。めっちゃカッコいい。3分ちょっとというサイズもカッコいい。そう、カッコイイロックンロールはすべてがカッコいい要素に昇華していくのだ。本当にカッコいい。
 彼らは、ブルーハーツが登場した時の衝撃にとても似ている。似ているのは衝撃ということであって、ブルーハーツに似ているのではないのだよ。
(2018.6.28) (レビュアー:大島栄二)
 


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