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comeropeway
『Sunday Morning』

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 このギターのペラペラ感。音の厚みがあるんだかないんだかよくわからない構成の中に圧倒的な存在感で鳴っているペラペラなギター。メジャーデビューしたならばきっと凄腕、いや並程度のエンジニアによって最適なサウンドアレンジを施されて世の中に流通しないだろうこのサウンドが、僕はとっても好き。バンドをやったことのある人ならきっと週末か、終電がもう終わった深夜のスタジオを思い浮かべるんじゃないだろうか。ライブ前日のような緊張感はなく、別に練習しなきゃいけない理由はないんだけれど、飲み会に行くのとは違ったバージョンで仲良しが集まる。週末の音楽スタジオはそういう空間でもある。カラオケはみんな歌わなきゃいけないけれど、スタジオなら楽器を鳴らしてさえいれば一言も発しなくてもいい。シャイな人にはとてもフィットする空間だったりする。いやいやステージに立つ前提だからシャイな人には向かないだろうと言われるかもだが、ボーカルやリードギターやらなければリズム隊のメンバーは誰からも注目を浴びずに30分ほどのステージをやり過ごすことは可能なのだ。それになにより、その時々で面子が違う飲み会やカラオケとは違って、バンドには自分が居るべき場所としての意味がある。たとえボワーンとしたラッパを鳴らしてたって、そこが自分の場所であるという安心感は生きていく上でとても重要なのだ。
 まあそんなわけで、タイトルが「Sunday Morning」なので意図としては日曜日の朝なのだろうが、僕は聴いていて深夜とか窓の無いスタジオを無意識に思い浮かべてしまう。こういうサウンドが与えてくれる安堵感というかノスタルジーというか、そういうものにむせび泣きそうになる。じゃあ気の抜けたサウンドが全部こういう安堵感を与えてくれるのかというとそんなことはなく、YouTubeに多数存在するド下手バンドの演奏はイライラさせるだけのゴミでしかなくて。だからそれとは明確に違うこの安定感や安堵感を生み出しているこのバンドはすごいなと思うし、解ったような顔をしてすぐに「綺麗」に修正したがるクソディレクターに改変されることなくこの音楽を世の中に流通させているインディーズというシステムの懐深さはすごいなと、この業界で30年近くやっていてあらためて感心してしまったりするのである。
(2018.9.13) (レビュアー:大島栄二)
 


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