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シンガロンパレード
『君も歩けば僕に当たる』

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 君も歩けば僕に当たるというタイトルはいかにも意味ありげな雰囲気がプンプンしているけれども、そこの意味性にとらわれすぎるときっとこの曲の良さを見失う。京都出身の彼らシンガロンパレード、初期の鴨川ストリートの映像がYouTubeにアップされている。そのキャプションによれば彼らが唯一カバーをしている曲だそうだ。この曲自体ボーイズタウンギャングによるカバーが一番有名でオリジナルのフランキーヴァリのテイクがどのようなパフォーマンスだったのかは今となってはさほど知られてはいない。30歳以下のシンガロンパレードにとってのオリジナルはボーイズタウンギャングのバージョンだろうと思われるが、では彼らのCan't take my eyes off of youがボーイズタウンギャング的なのかというとまったく違っていて、そこに僕は彼らが自分自身のスタイルをちゃんと持っているバンドなのだなと強く感じるのだ。バンドがただ音を鳴らすというのは簡単なことで、スタイルを確立などしなくても曲はできる。だがそういうバンドがカバーをするとオリジナルに引きずられ、カバーじゃなく単なるコピーになってしまう。2012年結成の彼らは2014年のパフォーマンスの時点で自分たちのスタイルを探し当てていて、それから4年の活動の中でたくさんの作品を出している。MVを制作している曲はその中でも推し曲のはずで、それらがどれも意味を求めさせるようなタイトルがついていて、そこにバンドとしての葛藤を感じる。音楽だけで理解してもらえるのならば簡単なことだが、実際には「とにかく曲を聴いて判断して欲しい」としか言わないバンドはことごとく陽の目を見ずに解散してしまう。どんな人も無名のバンドを聴くきっかけというのは音楽以外の何かに惹かれて時間を割くのであって、そこに付加価値を付けてなんとか聴いてもらうことに成功したバンドだけが、自分たちの音楽性やスタイルや実力を判断してもらう機会を得られるのだ。こんなレビューがその付加価値やきっかけになって彼らの音楽を聴いてもらえればいいと願うが、歌詞の意味などに意識を向けることなく、軽快な曲の展開、ポップでアップな明るいテイスト、ボーカルみっちーの全音域で全開の歌いっぷり、ギターソロがカッティングとはまったく違った音色でグイングイン鳴っているカッコ良さ、ブインブインいっているベースの心地良さ、そういったところに気がつけば、もう歌詞なんてほとんど入ってくることのない音楽世界の充実ぶりに魅了されるだろう。個人的には彼らのその魅力はキャプテンストライダムの魅力に似ていると思っている。そのキャプテンストライダムは一部の熱狂的なファンの支持を集めながらも2010年に活動を休止。そういうバンドと似ていると言うのはシンガロンパレードにとって良いことなのか悪いことなのかよくわからないけれども、音楽性の豊かさ、楽しさがあることは本当に共通しているし、今度こそ(というのも変な話だが)そういう実力あるバンドが人気を集め、多くの人たちに理解してもらえるといいのになと思ったりするのだ。
(2018.11.12) (レビュアー:大島栄二)
 


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