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RETO
『Restart』

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 これまで3度レビューを紹介してきたRETO。彼らの作品の深さやMVとの関係性、アイディアの卓抜さなどに惹かれて「紹介しなくちゃ」と何度も思わされたのだが、そういう彼らも現役のバンドであって、当然のようにライブはしているはずだったのに、そのことにまったく思いを致すことがこれまでなかった。バンドがリスナーに情報を届けていく端緒としてYouTubeというものが重要な位置付けになっている時代にMVを洗練させられるバンドは有利で、だからそこに力を入れていくし見る側もそういう映像を見る機会が多くなる。だがバンドの実力はライブにこそ出るもので、そこに気付くことなくMVばかり見ていたとは。あらためてライブを見てみると、MVで見せていた内心にダイレクトに触れていく繊細さとはまた違って、他のどんなライブバンドにもけっして劣ること無いパワフルなシャウトを見せていて驚く。いや、驚いてはいけないな。きっとこれがRETOの実力の一端なのである。
 このライブは渋谷のO-WESTで、公式にはオールスタンディングで2階席含め600人ということだが、実感としてはそんなに入ったら窒息する。実際は300も入れば十分満員だと感じられる。このO-WESTの後に行なわれたホールライブの会場、Mt.RAINIER HALL SHIBUYAも座席数で350ほど。現在立て替え中の渋谷公会堂の約2000というキャパと較べるとかなり小さなもので、RETOがライブバンドとしてそこに到達するにはまだQUATTROの750、O-EASTの1300(いずれも公式キャパ。実際はその2/3くらいでギュウギュウだろうか)をクリアしていく必要があるだろう。無論それはRETOに限ったことではなくて、すべてのライブバンドがひとつの渋谷サクセスストーリーとして駆け上がりたいと願う道で。しかしながら超えていけるバンドは本当に一握りにすぎない。だが、人気の度合いを示す集客力だけがバンドを測るバロメーターではないし、2000のホールを満杯にできたバンドもそこに至るまでにエネルギーを使い果たしてしまっていることが多い。このRETOのパフォーマンスを見たって、彼らがもう十二分にライブの実力を有していることは明確で、ライブではない作品のクオリティも卓抜していて、本当はこういうバンドがエネルギーを使い果たす前に急激に認知された方がいいのになあと思う。それは才能を持った彼らがより高い何かをつかむためにも、音楽を愛する人たちが本当にフレッシュな状態のバンドをちゃんと目撃するためにも。
 さて、そんな彼らのツアーファイナルワンマンが2日前に終わり。会場は下北沢のCLUB Que。その会場キャパに言及することはもうやめておこう。このライブ終了後にいくつかのライブをおこなって、3月いっぱいで活動を休止することをRETOは昨年12月に発表している。寂しいよな、ホント。音楽の質とは別のところで、バンドはエネルギーを使い果たしてしまうことがあるのだ。ベテランアーチストの訃報が流れてからその才能を惜しんでももう遅いように、バンドが疲弊して活動休止してしまってから寂しがっても遅いのだ。
(2019.1.14) (レビュアー:大島栄二)
 


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