Paul McCartney『My Valentine』 Next Plus Songゲスの極み乙女。『だけど僕は』

Leonardo Marques
『The Girl From Bainema』

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 フラワーショップに行くのは楽しい。その時々に並ぶ花の香りと店内のBGMと贈り物を選ぶ人たちの雰囲気が優しくなっているようで、最近ではプリザーヴド・フラワーのような半永久的に枯れない花より、ソープフラワー、つまりは石鹸できた花が目立つ。見た目、水やりの問題などから急に需要が増えているという。また、面白かったのがヒーリングボトル。フレッシュドライ加工した植物をボトルの中に閉じ込めたいわゆる、植物標本。だけれども、揺蕩う花の姿にアロマや紅茶などを合わせると、和むのも確かで、またボトルが割れたら、という刹那性も良い。永遠に在るものなどなく、束の間の休息は翌朝の気構えに変わる。レオナルド・マルケスの音楽も現代的で瞬時に消費されるものかというと、どこか普遍的で、いつの時代にもフィットしそうな陽だまりのあたたかさもある。ブラジルはミナス・ジェライス出身のSSW。彼のこだわりは音に垣間見える。グッド・メロディにアナログでソフトな質感。こんな世界が近くになったようで喧しく、壁一枚隔てた向こう側の生活も想像できなくなってしまうようなときに、時間概念や日常概念を櫛で丁寧に梳かす瞬間の彼岸がここにあって、とても潤沢な気持ちになることができる。同時に、二律背反的な座りの悪い想いにも。ジョビン、レノン、エリオット・スミスなどからの影響をそのままに、A&Mへの敬意も含めた上品で優雅なポップがここにはある。それをして、ヒーリング・ポップなんて形容もされているが、さりげなく深みに踏み込むほどに前後不覚になり、ボトルの中に標本化してしまうかのような極北の美の怖さも感じる。花も枯れれば、音楽もずっとは鳴り続かない、空も緑もそのままであるはずがない。いつかの当たり前を閉じ込めたときにこそ、いつもの当然はもう化石になってしまっているのかもしれない。化石の未来を静かに待っているときは無音より彼の音楽があればいいなと思う。
(2019.2.15) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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