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kobore
『東京タワー』

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 東京の暮らしに絶望的な心持ちを投影するというのが昨今の東京ソングには多くて。それは結局昨今の東京に暮らす若者を中心とした住人の心持ちをそのまま映しているということなのだろう。この曲でも「こんな街に何があるんだよ」「夢も希望も無い方が楽だな」「こんな街で何か見つけたかい」と歌われる。ふと見上げた夜空に輝いていた東京タワーの姿が。それに人は何を見るのだろうか。東京タワーが自分を見守ってくれている、問いかけてくれている。それでも生きているんだと、ずっと立ち尽くしている自分じゃないはずだろと、自分に言い聞かせる。その歌詞に、僕は東京暮らしの絶望をみるよ。東京タワーは単なる電波塔だが、戦後復興のシンボルでもあった。長いこと日本で一番高い建造物だったし、なにより、美しい。その高くて美しいタワーが街の中心にそびえ立っているという事実は、そこに暮らす人の憧れであり誇りであったとしても何の不思議もない。この曲で東京タワーが担っている役割も何かの象徴のはず。高さも電波塔としての役割もスカイツリーに抜かれ、そこに立っている実質的な意義は薄れつつあるけれども、変わらずにそこに立ち続けて、美しさを放ち続けている。夢も希望も見失いつつある者が、東京タワーを見て自分もそうだと納得させる。今も夢を仮託するシンボルとしての東京タワー。聴いていてとても切ない。象徴があるから夢を仮託して現実を先延ばしにする。しかしその役割をほぼ終えたタワーこそが、変われずにそこにあるものの象徴なのではないだろうかと思ったりする。もちろんそれが唯一の正解であるはずもなく、踏ん張って前に進むイメージとして使えるのならそこに役割もあるのかもしれないし、逆にそれを現実を見る契機として使えるのならそれもよしで。いずれにしても象徴的な何かに対してある種のイメージを見るのもその人自身で、結局は何にしても自分が結論をつけていくしかないのだろう。
(2019.2.26) (レビュアー:大島栄二)
 


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