MONKEY MAJIK × 岡崎体育『留学生』 Next Plus SongACE COLLECTION『Lady』

ヒカシュー
『放射能(Radioactivity)』

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 今日であれから8年。この間さまざまな災害が世界中を襲って、その度に多くの人が死んだり被災して住処を失ったりしてきて。でもまあ自然に文句を言うわけにもいかず、だって雨が降る時は降るし、地震だって起きる時は起きる。その責任を誰に押し付ければいいのかって言われても困る。だが原発事故は自然だけが原因じゃないわけで。ほとぼりが冷めた頃に収束宣言とかアンダーコントロールとか言って廃炉まで何十年とか工程表を見せられてきたけれど、あれだけ騒いで予算を投じた凍土壁の効果もほぼポンコツだったし、7年半以上が過ぎたつい先日、溶け堕ちた核燃料にやっとロボットアームが触ったというニュースが流れた程度で。触っただけですよ、運んでもいない。どのくらいの量がどんな状態で溶け堕ちているのかもよくわからず、やっと触ったと誇らしく言われても、それで実際の廃炉は予定通り進むのですか、そもそも予定を出した根拠って何だったんですかと疑問だらけだけれど、その疑問を投げかける相手も存在していなくて。
 2011年当時はまだまだ世間の関心も高く、デモやら何やら行なわれていたけれど、今となってはもう誰も騒いでなくて。騒いでる人がいれば奇人変人の扱いで見られたりもする。ヒカシューのこの曲、ショッキングでしたよ。特に政治的な意見を言っているのではなくて、事実(?)を淡々と述べているだけのような曲。淡々とした鍵盤によるマイナーなフレーズが繰り返され、巻上公一のテルミンサウンドが不安な何かを連想させる。この曲はもともとクラフトワークの曲で、それをヒカシューが1988年にカバーしたもの。福島原発事故の23年前のカバーで、なんでそんな時代にそんな曲をと思う人もいるかもしれないが、当時チェルノブイリ原発事故から2年が経過した頃で、日本でも反原発の動きが盛んで、若者たちが原発施設に行って横たわるというダイイン行動が一部で盛上がったりしていた。有名なRCサクセションの『COVERS』が制作されて発売中止になったのも1988年のこと。その時の盛上がりも一時的なもので収束し、2011年の福島原発事故だって、その後の反原発運動が盛上がって、次第に下火になってしまったのは周知の事実。為政者が有権者を甘く見てしまうのも無理はないかなあと思わざるを得ないですよ。たいした抵抗もできやしないけれど、こういう日にこういう曲を思い出して、忘れてないですよという気持ちを示すことは、ささやかだろうけれど重要なことだと思う。
 この動画は2012年のライブ演奏。この年は本家クラフトワークも来日して『Radioactivity』を披露したり、YMOもカバーしたりと運動盛上がりのひとつの象徴となった曲。でも今はどうなのだろうか。ヒカシューはこの曲やってるんだろうか。クラフトワークはこの4月にも来日公演をするらしいが、この曲やるんだろうか。そして僕らはそういう表明を期待してるんだろうか、頼みにしているんだろうか。
(2019.3.11) (レビュアー:大島栄二)
 


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