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三月のパンタシア
『三月がずっと続けばいい』

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 三月がずっと続けばいいって、三月に限らず毎月そう思う。日々が過ぎていくのは本当に速くて、気がついたら今週が終わってて、うっかりしてると今月が終わって、そのうちに今年が終わって来年も終わってやがて人生も終わり。まあそこまで心配するのはどうかとは思うけれど、毎月毎月最終日が来ると「もう終わりかよ」と愕然とする。
 そんな毎月の驚きの中でも、やはり年末と年度末というのは特別な感慨があるよ。特に年度末は四月から新しい生活が始まるという人も多くて、未知の新生活への不安もあるだろうし、愛しい今の生活との別れが寂しいという感情もあるだろうし、後ろ髪を引かれるような寂寥感を覚えるもの。この曲も三月で片想いの相手との別れが自動的にやって来る人のどうしようも出来ない想いを綴っている。言葉にして伝えればいいのにという正解に対して、困らせたくないよという。それはすべて言い訳だ。伝えることの困難、困難を避けるための正当化。自分に優しく居続けることが結局は自分を追いつめる。そして曲の最後に「振り向いて最後に言わなくちゃ」と。三月という別れの季節が「言わなくちゃ」的な、変わっては困る何かへの対処を迫るものだとしたら、それは人が成長するための後押しでもあり、重要なことなのかもしれないなあ。
 実際には中学や高校では三月の頭付近の早い時期に卒業式が行われる。なので三月が続いてもその前に別れがくることも多くて、厳密に言えば三月がずっと続けばいいというだけでは無い。だがこのユニットの名前が終わりと始まりの物語を空想するということで、三月はそういう季節の象徴でもあるし、細かな卒業式の日程が云々などということ自体があまり意味のないことなのだろう。この別れの切ない気持ちを歌う曲がかなりアップテンポでビートの効いた曲調になっていて、知らずに聴いたらそんな心模様を歌っているとは気付かないだろう。だからといって懐メロの昔から定番のバラードで歌えば良いのかというとそんなこともなく、こういうスピード感ある逡巡というのも、時間に追われる現代の音楽だなあという気がするし、アップテンポだからこその、もう三月が終わっちゃうという焦りのようなものをリスナーに芽生えさせ得るのかもしれない。
(2019.3.29) (レビュアー:大島栄二)
 


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