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TETORA
『今日くらいは』

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 TETORA、最近MVをたくさん公開している様子。最初にレビューしたのはずいぶん昔のような気がしてたが実際は昨年の9月で、まだ1年も経っていない。それからしばらく忘れてたら北沢東京氏が同じ曲でレビューしたのが今年の4月。同じ曲じゃなくてもいいだろうという気もしたが、多分その時点では他にMVが無かったんじゃないだろうか、そんな記憶がある。確認はしてないけれど。で、musiplの中では同じ曲が2回レビューされたというのはそれが唯一のケースです。んで、彼女たちの曲がTwitterアカウントで過去レビューとしてツイートされるとリツイートなどされて反応が出るようになってきたのが最近のこと。なるほど、先月6月末にアルバムがリリースされたからな。そのちょっと前くらいから活動もプロモーションも盛上がったのだろうし、ファンも増えてきたのだろう。いいことだ、いいことだ。そういった活動とプロモーションの一環としてMVが連続で公開されて。昔々なら頑張ってMVを作っても地上波で放送されることなどほとんど無く、CSやBSで放送されることもほとんど無く、一体なんのために作ってるんだよという感じだったけど、今は作った数だけ必要なリスナーには届くし、そこからSNSなんかで広まっていく。良い時代です。
 話を戻すけれど、昨年のレビューでも触れたのはボーカル上野はゆねの特徴的な声で、「切り裂くようなハスキーな声」と書いている。鋭いんだけれど、MVではなんとなくかしこまったような、よそいきの感じがどうしても拭えない。別に拭わなくってもいいんだけれど。声だけが切り裂くようなおとなしいバンドのような印象がある。現時点で最新のMV「レイリー」でも、どこかの部屋で弾き語ってる映像が映る。ギターを抱えていないシーンではソファにもたれかかってて、アンニュイな雰囲気。曲調もミッドテンポからスローテンポにかかる辺りで、やはり全体的に静のイメージ。それはそれでまったく構わないのだけれど、それがバンドのカラーだと思われるのはどうなんだろうか。その点、このライブ動画は印象がまったく違う。もちろんメタルバンドが髪を振り乱したりとか、ハードコアバンドがチェーンソーを振り回したりとかいうのとは違う(当たり前だ!)けれど、MCを含めて彼女たちが全力で音楽に立ち向かっている姿が映っている。曲前の冒頭で「21歳、人生賭けてやるって決めた!」と叫んでいる。こういうの、いいよ。バンドがあるタイミングで大きくなると、大きな力に身を委ねて任せて進んでいく的な他人まかせ感が滲むことがあるけれど、本人たちが「人生賭けてやる」っていうのは、そういう知ったかな先入観を一気に払拭するパワーがあるよ。客席とステージの間の、画面の前と向う側の間の、ファンの前でだけ見せるビジネスライクな笑顔と普段の表情との間の、そういうところにあるもやもやとした壁を取っ払って身近な存在に感じさせてくれる。演出によってどれだけ素敵なMVをたくさん出すよりも、こういうライブ映像が与えるインパクトは結構あるんだなということを教えてくれるようだ。いやもちろん、そのライブ映像だって編集して作られているんだし、多くのペーペーバンドが固定カメラで撮ったライブ映像と同じように考えるのは間違いなんだけれどね。
(2019.7.13) (レビュアー:大島栄二)
 


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