神田莉緒香『今夜ひとり、見えない月の下で。』 Next Plus SongTwo Door Cinema Club『Satellite』

SAPPY
『pathos』

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 SAPPYの新MV。振り切れてるなあ〜。2013年のレビューの時のポップさとはまったく違ってて、歌があるんだか無いんだか。無いよねこれ、歌無いよね。あるけどね、でも無いよね。だからといってインストバンドと言い切る自信はさらさらない。うっすらとボーカルは乗ってるんだもの。これ、歌かな。歌なのかな。でも歌だろうが何だろうがもうどうでもいいレベルの心地良さ。彼らは自身でシューゲイザーバンドとはHPプロフィール欄に書いたりはしてないものの、TwitterのこのMVを紹介したツイートでは「海の日に燃え上がる炎と桜と蒼空と、シューゲイザーをお届けします」と書いていて、だからやっぱりこのサウンドはシューゲイザーといって間違いないんだろう。シューゲイザーって難しいなあと前々から思ってて、なんとなく電子音をいじったバンドが「僕たちはシューゲイザー」とか言っちゃうものだから、なんなんそれ、ただのポップじゃん、といつも思う。
 んで、意味を調べてみる。「フィードバック・ノイズやエフェクターなどを複雑に用いた深いディストーションをかけたギターサウンド、ミニマルなリフの繰り返し、ポップで甘いメロディーを際立たせた浮遊感のあるサウンド、囁くように歌い上げるボーカルなどがシューゲイザーの一般的特徴」とかウィキには書いてある。でもこれウィキだからね。んで他にもいろいろ探してるとCDJournalのページに「シューゲイザーはもともと、マンチェスター・ムーブメントの後、80年代後半のイギリスで生まれた。フィードバックを多用して歪ませた幻想的なギター・サウンド、繊細で耽美なメロディ、囁くように歌われるヴォーカルを特徴とし、足元に並べたエフェクターを見ながら演奏するプレイ・スタイル、またそのうつむき加減の内省的なスタンスを揶揄してシューゲイザーやハッピー・ヴァレーなどと呼ばれる」と書いてある。なるほど、フィードバックノイズと繊細で耽美なメロディと囁くようなボーカルの3点セットがシューゲイザーなのねと、一応まとめてみると、なるほどSAPPYの音楽はまさにシューゲイザーだ。しかし、囁くように歌うというだけじゃなく、ミックスでかなりリバーブやらディレイやらを強めにかけて遠くで反響しているだけのような仕上がりにしてて、徹底しているなあと思う。この遠くでこだまのように反響しているように聴こえるボーカルをよくよく聴いてみると、エフェクトかけなければ結構明瞭にシャウトしてるんじゃないかなあと感じられる。例えば原田知世や手嶌葵などのようなボーカリストが歌えばノーエフェクトで囁くような歌になるだろうけれど、ほとんどのボーカリストには普通に歌っても囁くような声にはならず、特にライブハウスのような環境でしかも演奏がロックバンドのそれであれば、歌う時に囁くような歌い方では客席に届きやしない。そこで鍛えられた人に囁くように歌えといってもなかなか難しい。必然的に、エフェクターで飛ばすような手法を使うことがシューゲイザーにはフィットしているのかもしれない。そもそもサウンド自体がエフェクターを複雑に用いたサウンドなんだから、声だけエフェクターを否定するような必要はまったくないのだし。
 とはいっても、歌を中心に据えるバンドであれば、ここまでボーカルを飛ばすのはかなり勇気が要ると思う。多くのリスナーにとって音楽イコール歌という認識なのは現実だし、このくらいの歌の聴こえ方は「はあっ? 聴こえないんですけど」みたいな反発を受ける可能性を秘めているからだ。それ故に、多くの自称シューゲイザーバンドたちも「それのどこがシューゲイザーなんだ?」と思ってしまうようなもろ歌モノポップバンド風の仕上がりになってしまうのだと思う。しかし、そんな反発など知らんわと言わんばかりの振り切り方で、シューゲイザーを貫いているこのSAPPYは素晴らしいな。6年ほど前にレビューした曲とはほとんど別モノというくらいの進化を遂げてて、当時の期待とは全く別方向ではあるものの、これはこれでむしろ「やられたな」と脱帽したくなるくらいの思い切りのよさであり、求道者の潔さである。
(2019.7.30) (レビュアー:大島栄二)
 


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