くるり
 
『忘れないように』
 ザ・ビートルズ中期のサイケなハネ、ザ・フーの初期のビートニク、ブリティッシュ・インヴィジョンなリズムにモッドなセンスがうねる。途中、繰り返される「Go Let It Out!」とはかのマンチェスターの世界的なバンドの過渡期と言えなくもなくないシングルのフレイズ。立ち並ぶ墓場には多くの偉人たちが眠り、忘れ去られる瀬で、それをずっと忘れずに居られるのは難しい。だからこそ、キャリアを重ねて、悼みを尽くして、それでも演奏を続けてゆくバンドが背負う声の……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『温泉』
 「温泉」が「ONSEN」として世界にもっと伝わってゆくにはタトゥーや民族性、ジェンダーなどの問題がありそうだけれど、せめては忌憚なくあたたかいお湯に入って異言語で「同じような話題」や「居心地」を交わすのは良い気がする。腰が痛い、冷え性、和みたい、血流を良くしたい…なんでも。そういう他愛ないような健康を巡る課題こそが普遍的で、歌でそれらを解すのはまた違ってくる……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『ふたつの世界』
 くるり、そのもののアクションが目立った年ではなく、個々の活動も含め、音楽雑誌でも岸田繁氏が「地味な一年だった。」と称するように、しかし、個人事務所を立ち上げて以降のくるりの在り方はまるで、昨今のシンギュラリティを地で行くようで頼もしさを貫いていた。筆者も足を運んだ『NOW AND THEN vol.1』における、『さよならストレンジャー』、『図鑑』の再上映のようで、アシッドなまでに今の温度でどこか解体してゆくブルーズの重さに心底、痺れながら……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『Liberty&Gravity』
 改めて、くるりという存在の異質さと真っ当さを際立てる曲だと思う。今でこそ、「東京」、「虹」、「ワンダーフォーゲル」、「ばらの花」、「Remember Me」など数多くの曲とメンバー変遷の中で都度、フォーマット・チェンジしてゆく中でも、その“流浪の佇まい”をして着実な支持をされてきたバンドとして既に15年目を越え、こうして続いている。若いバンドメンの方によく聞く。くるりのカバーをしようと思うと、京都特有のブルーズに根差したコード進行が……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))