スピッツ
 
『優しいあの子』
 2019年になり、日本は元号も変わり、気象状況や世界情勢も慌ただしく日々刻々変わりゆく。かつてまでの常識は時代遅れになり、絶対的な正論の束が異端者を探し出す不気味さを帯びた空気は極まりながら、個々としての自らは犠牲者に加害者にならないよう、でも、第三者ではなく、主体としての審美眼はある種傲岸に、人としてのマナー、ルールを建前に窮屈な、入り口をよりタイトにしているかのようで、新しい時代には相応の軋みがあるとしても、新しいことは本当に新し……
 
  (レビュアー:松浦 達)  

 
『ヘビーメロウ』
 ささやかだけれど、人それぞれに持つアンテナや感受性は違う。だからこそ、面白い。小さいことにくよくよするなよ、と言えるには小さいことで本当にくよくよしないとその先に行けないことがある。大きな夢を見ようよ、努力は報われるからそこに力を割いて、優先順位をつけて、みたいな言葉はまだあちこちで有効に通じながら、階段を昇り切った人が勝つ者の論理などを説いている。でも、勝つとか負けるって究極そういう問題じゃない。問題はどうそこに……
 
  (レビュアー:松浦 達)  

 
『みなと』
 なんとなく呆然としているあいだに、この数年で世の中を覆う(抽象的だが)”不穏な唸り”は上がっている。その「唸り」を日銀・黒田総裁がアベノミクスの実質的な失敗を認めたことに還るのか、または、幾つもの日本に限らず、世界中の痛ましい天災にめぐるのかは人それぞれにしても、誰かが「誰か」を解ろうとする、わずかな想像力の余地が切り落とされながら、同時に、過剰な慈愛の束がインフレ的に善意の道を埋め尽くしているような感じもして、その道を歩いている……
 
  (レビュアー:松浦 達)  

 
『日曜日』
 日曜日は平等に誰でもあるが、その日曜日の費消の仕方はそれぞれである。買い物、飲み食い、無為、なんでもいい。ただ、幻想に浮かぶ日曜日も音楽は用意してくれる。「弱い犬ほどよく吠え」ながら、日本でも桁違いのセールスをあげて、前線に立つようで様子見をしているバンド。「ロビンソン」で築き上げた二人だけの妄想の国はポップ・ミュージックが希求し得るべき最大公約数だったとしたら、「空も飛べるはず」、「チェリー」や「スターゲイザー」における……
 
  (レビュアー:松浦 達)