徳永憲
 
『雪の結晶』
 久しぶりにして待望といえるアルバムのリードに冬を先取るという「雪の結晶」というのが彼らしい。徳永憲もサヴァイヴしているアーティストで稀有な存在で、アシッド・フォークをベースとしつつ、そういった領域を越えた多彩な音楽性の下に、多様にしてときにヴァン・ダイク・パークス、ブライアン・ウィルソン的な捻じれた内的アレンジメントの部片で、イロニカルで詩的な歌詞を歌い、特有の様態で居続けており、コア・ファンも少なくない。彼が本格デビューした……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))  

 
『悲しみの君臨』
 90年代後半に密やかにデビューしてから、彼の繊細な声と皮肉めいた歌詞、フォーキーな叙情性の中にドープな闇が見えるスタンスは変わらないといえるが、そこに安易に、レジェンド化したシド・バレットなどのSSWの名を寄せるには、その後のキャリアが着実に差異を示している。アレンジメントや曲の幅を拡げ、常に「移動中」のアーティストだとも思う。イラストレーターとしても非常に有名だが、セイルズというバンド活動を精力的に行なう中村佑介の彼への偏愛振りの……
 
  (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))