吉澤嘉代子
 
『女優』
 吉澤嘉代子はメジャーデビューして一体どうしてしまったんだろうと思ってしばらく。昨年の『残ってる』では本来の良さに回帰してきたと感じてレビューもしてみたが、『ミューズ』でさらに洗練され、この『女優』ではまさに一皮も二皮もむけ、その音楽が原点に忠実に進化を遂げたような印象を放っていて素晴らしい。ではその本来の良さとは一体何かというと、寄り添う女性讃歌。彼女が歌う女性の姿はとても切なく、背伸びをしつつも等身大でしかありえない……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『残ってる』
 この新しい「残ってる」という曲は、人間の内面にある、普通なのに普通じゃないことを突いてくるという彼女のいい部分がじんわりと沁みてきてて、とてもイイ。このMVも、本人が出てこなくて、そしてリリックが重ねられていくというある意味デビュー前の彼女のMVに多く取り入れられていた手法が少しばかり変形して使われているような気もして、嬉しい。タイトルの「残ってる」という言葉を最初に見た時に、メジャーデビューして変身していった彼女の中に……
 
  (レビュアー:大島栄二)  

 
『未成年の主張』
 ボーカリストを好きになる時、好みの声だから何を唄ってても好きになっちゃう理想の声ってのがあるけど、吉澤嘉代子の場合、声でなく、歌い方のそのまた根本の、口の中が大好きだ。唄い語り気味の『未成年の主張』のモノマネをしてみて欲しい。ま、わ、ぴ、ん、は、わん 。彼女のモノマネをした時の、口元のモニョモニョする発音の身体感覚と恋がユーモアに暴発した恥ずかしい感じの、なんという共感覚。赤んぼうが「ママ」と発する時には、口元の筋肉に優しい……
 
  (レビュアー:北沢東京)